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サイエンス・カフェ(経営学)始めました

 神戸大学経営学部では、主として高校1・2年生を対象として経営学サイエンス・カフェをオンライン(Zoom)で開催することとなり、現代経営学研究所は、事務局を担当しました。

 サイエンス・カフェ(経営学)では、経営学とはどのような学問なのか、経営学部で何を学ぶのか。これらの疑問に対して、神戸大学経営学部の教授陣が経営学の魅力を模擬講義と質疑を通じてお伝えします。経営学の楽しさや広がりを感じていただけるような場になればと思います。

 第1弾として、8月16日~20日に、以下のような内容で開催しました。

第1回 8月16日(月)
テーマ:「人材の“優秀さ”とは何か?」
講 師:服部泰宏 准教授
概 要:人の優秀さには身体能力や学力以外にさまざまなものがあり、それを評価するさまざまな仕組みもあることを学びます。

第2回 8月18日(水)
テーマ:「運のある人とそうでない人の違いとは?」
講 師:原田勉 教授
概 要:運がある人、ない人には、各々共通する特徴があります。運をよくするための経営学的方法を考えていきます。

第3回 8月20日(金)
テーマ:「キャッシュレス化と私たちのくらし」
講 師:藤原賢哉 教授
概 要:キャッシュレス化は便利な一方、使い過ぎや不安を感じる人もいます。キャッシュレス化への向き合い方を語ります。

 

 今回担当いただいた3人の講師から、寄稿いただきました。

サイエンス・カフェ初回を終えて 

服部 泰宏 

 西洋とりわけ英国においては、科学をする人とそうでない人との間のギャップを埋める「科学コミュニケーション」が、かなり昔から行われてきました。例えば19世紀最高の実験科学者と言われるマイケル・ファラデー。彼がクリスマス休暇の時期に、「クリスマス講演会」と題する子どもたち向けのイベントを開いていたこと、その話に感化され、多くの若い才能が科学の世界に誘われていったことはあまりに有名です。

 200年も前に行われた、このサイエンスカフェの成功の背景にはもちろん、ファラデーの科学者としての卓越性があったはずです。研究者としての優れた能力なしに、科学コミュニケーションの成功はありえないでしょう。

 しかし、この成功にはもう1つ、重要な要素があったように思います。端的に言えばそれは、「科学をする人」と「そうでない人」の間の、「知識の伝達」を超えた「熱量の交換」です。研究者は誰しも、高い熱量をもって自分自身のテーマを探求しているものですが、サイエンスカフェという場においては、この熱量が知識とともに、聴衆に伝達される。この点こそ、熱量をそぎ落とし、もっぱら情報の伝達を行うことになる学校の講義や講演、学会報告と、サイエンスカフェとの決定的な違いになります。ファラデーは、超一流の研究者であり、情報伝達者であると同時に、優れた熱量の伝達者であったと私は思います。

 そしてここに、若い世代を科学の世界に誘うためのヒントがあると、私はみています。若い世代の人たちが、「そうでない人」から「科学をする人」になるという決断を行うためには、極めて大きな熱量が必要になるはずだからです。もっと知りたい、面白い、かっこいい。なんでもいいのですが、このような熱量を提供して初めて、私たちは彼らを私たちの世界に誘うことができるはずです。知識のコミュニケーションの場であり、かつ、熱量のコミュニケーションの場であるサイエンスカフェ。この場のデザインについて、もう少し考えてみたいと思います。

 

サイエンス・カフェを終えて

原田 勉

 サイエンス・カフェで高校生を対象に、経営学の紹介として「運のある人とそうでない人の違いとは?」というタイトルでお話をさせていただきました。残念ながら顔出しをして参加いただいた受講生の方はいませんでしたが、見知らぬなかで顔出しは確かに難しいなとは思いました。

 しかし、講義のなかで2回ほど投票を行いましたが大半の受講者の方々は、設問に対してキチンと回答していただけました。特に驚いたのは、「自分は運がよいと思うかどうか」という設問に対し、9割以上の受講生が「はい」と回答されたことです。学部授業やMBAの授業で同様の質問をすると、「はい」と答える方は5割以下であることがほとんどですが、9割というのは初めての経験でした。

 講義でも触れましたが、運とは自らが作り上げていくもので、その意味では、受講生の皆さんの将来は大変明るいのではないかと思った次第です。皆さんの将来が明るいことを心より願っています。

 また、そのなかの何人かが神戸大学経営学部に入学され、六甲台でお会いできれば素晴らしいなと思っています。

 

サイエンス・カフェに参加して

藤原 賢哉 

 高校生向けのオンライン授業ということで、神戸大学への入学を検討している学生さんに対して、経営学部のイメージが伝えられれば良いと思って担当しました。

 授業の構成は、①タイトル(私の場合は「キャッシュレス化と私たちのくらし」)と内容見出し、②自己紹介と担当授業(金融システム)のイメージビデオ、③アンケート1回目(キャッシュレスの使用状況)、④キャッシュレス化の背景とメリット・デメリットの説明、⑤アンケート2回目(社会コストの負担と理想的なキャッシュレス決済比率)、という具合です。イメージビデオは、昨年、数理データ・サイエンスセンターの予算で作成したもので、神戸大学での授業とキャンパスライフについて雰囲気でも伝えられればと思い見てもらいました。また、アンケートは、キャッシュレスに関する高校生の意識と質疑応答のきっかけになればと思って実施したものです。

 高校生とキャッシュレスは、テーマ的にやや不安(家計管理等はしてないので)だったのですが、チャットでの質問等はそれなりにあり、担当してよかったと思っています。ただ、初めての企画でもあり、事務局には、かなり負担をおかけしたように思います。個人情報の関係で顔出しは難しかったのかもしれませんが、やや寂しい気もしました。もうちょっとうまいコミュニケーションの仕掛けができればとも思います。

参加者の方からの感想

・ わくわくするお話でしたが、ちょっと難しいところもあったので、資料を見返して復習したいと思います。
・ 本日のお話は興味のある分野でもあり、大変興味深く有意義な時間を持つことができました。このような機会を作っていただき、ありがとうございました。
・ このような大学のイベントに参加するのは初めてだったのですが、興味深いお話が聞けてとても良かったです。ありがとうございました。
・ 夏休みに新たな世界を経験させたく、息子(中学生)を受講させました。90分の受講に耐えれるか不安もありましたが、最後まで興味深く受講していました。

 参加者の方から上記のような感想をお寄せいただきました。

 不定期になりますが、今後もサイエンス・カフェ(経営学)を開催する予定です。次回からは、企画が固まりましたらご案内いたします。ご家族やお知り合いの方など、ご関心をお持ちの方にご案内いただけますと幸いです。