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『プレMBAの知的武装』出版記念シンポジウムのご報告
宮尾 学(ビジネス・インサイト編集長・神戸大学大学院経営学研究科 准教授)

2021年 中央経済社
2021年8月22日、神戸大学大学院経営学研究科の主催で『プレMBAの知的武装』出版記念シンポジウムを開催しました。新型コロナウィルス感染症の拡大が懸念される中ではありましたが、対策をしっかりした上で、大阪のブリーゼプラザ小ホールで講演会とパネルディスカッションを行いました。会場参加の人数は制限しながらオンラインでライブ配信を行い、多くの方にご参加いただけるイベントとしました。
『プレMBAの知的武装』は、神戸大学MBAの30周年を記念して出版されたMBAの入門書です。本書では、神戸大学MBAの教授陣12名が、MBAプログラムで学ぶ基本的な知識について解説しています。理論の使い方、データ分析、財務分析、ロジカル・ライティングなどビジネスでも役立つ基本スキルと、MBAプログラムの主要な科目の概要を学ぶことができるので、経営学に興味を持ち、MBAへの入学を考えるビジネス・パーソンにぴったりな書籍です。
今回のシンポジウムでは、本書の執筆陣から國部克彦教授と鈴木竜太教授に、その内容について解説していただきました。また、神戸大学名誉教授の加護野忠男先生、神戸大学MBA修了生である井上喜文氏(パナソニック株式会社経営企画部長)と瓜生原葉子氏(同志社大学ソーシャルマーケティング研究センター長)を交えたパネルディスカッションで、本書が提起する「知的武装」について討論しました。

國部克彦教授は、「MBAで俯瞰力と探究力を身につける」と題した講演で、神戸大学MBAでは何が学べるのか、これまでに指導した学生の学位論文にも触れながら解説されました。鈴木竜太教授は、「理論という武器の使い方」と題した講演で、大学で学ぶ理論がビジネスの現場でどう役立つのかについて解説されました。二人の講演の要点は、アカデミックな研究やそこから生み出される理論は、上手く使えばビジネスにもとても役立つこと、MBAプログラムで修士論文を書くことはその理論の使い方(と限界)を学ぶための優れた方法であること、だと思います。
続くパネルディスカッションでは、加護野先生から神戸大学MBA創成期の話やアカデミアとビジネスの関係の話、井上氏と瓜生原氏からお二人が神戸大学MBAで何を学び、それをどう活かしてきたかの話がありました。パネルディスカッションで興味深かったのは、「アカデミアの住人は確かに井の中の蛙かもしれないが、だからこそ、その井戸から見あげる天の深さを知ることができる」という加護野先生のお話でした。MBAプログラムの学生は、日常のビジネスパーソンという立場を離れて、アカデミアの住人になります。そこで学ぶことは焦点を絞った理論です。しかし、その理論の目を通して世の中を見れば、より深く理解することが可能になるのです。これには、実際にMBAプログラムを経験した井上さんも瓜生原さんもうなづいておられました。
当日は、会場に28名、オンラインで90名の方にご参加いただきました。事前アンケートでは、参加者の約40%がMBAに興味があり調べている、という方でした。今回のシンポジウムをきっかけに、多くの方に神戸大学MBAを志していただきたいと思います。
