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MBA Cafe主催 原田勉教授によるオンライン講演会のご報告
2021年2月5日に「不確実性に対処する新たなアプローチ:OODAループとポジティブ・デビアンス」という経営学の最新トピックを、原田勉教授にご講演いただきました。
MBA Cafeでは、コロナ禍になって以降、修論相談会などオンラインを活用して開催してきましたが、今回初めて講演会もオンラインで実施しました。従来は対面で開催していましたが、コロナ禍においてはオンラインセミナーがニューノーマルとなり、参加者の方々にもスムーズに受け入れていただきました。当日は、インドネシアやマレーシアなど海外からの参加者もおられ、場所の制約を受けないオンラインならではのクロスボーダーな講演会になったと実感しております。時流に沿った大変興味深いテーマだったこともあり、過去最高の176名の参加となりました。

OODAループは、元米国空軍大佐のジョン・ボイド氏が提唱した意思決定行動理論です。もともとは米国海兵隊で採用され、湾岸戦争などで顕著な成果を上げたことで有名になりました。OODAループは「観察 (Observe)」「情勢判断 (Orient)」「意思決定 (Decide)」「行動 (Act)」から構成されます。多くの企業などで活用されているPDCAサイクルと決定的に違うのは「計画」を出発点としておらず、ミッションを達成する手段を「観察」によって発見していく点にあります。コロナ禍のような事前に予想や計画することが難しく不確実性が高い状況において、OODAループは有効に機能します。つまり、間違わないようにするのではなく、とにかくやって(実験して)みて、より多くのフィードバックを得ながら改良していく製品開発の上流工程や、新規事業創出などの場面に適しています。ここで誤解してはいけないのは、OODAループが優れていて、PDCAが優れていないということではなく、それぞれの場面において、すみ分けすることが大事だとも強調されておられました。
原田教授は、組織変革を起こすために、持株会社化やカンパニー制を導入する企業も多くあるが、うまくいかないケースが多い点に言及されました。これは、従業員の納得感のないまま、トップダウンでロジカルに組織構造を変えるだけでは、従業員の行動変容は起きないという点に根本的な原因があるということでした。事業がうまくいかない原因を特定することは難しく、仮に特定できてもやり方が悪ければ、問題をさらに悪化させる可能性があるという視点をサジェスチョンしていただいたことは、私にとって、目を洗われる思いでした。今までは、事業の病巣原因を特定し、それを除去すれば、業績は改善すると漫然と考えていたからです。しかし、従業員が行動変容するためには、ロジックだけではなく、腹落ち感が必要であり、組織改革のヒントは、現場に眠っていることを示唆するものだと実感しました。
例えば、多くの企業や個人にとってGAFAやスティーブ・ジョブズのような事例(ベストプラクティス)を自社や自分に当てはめても、うまくいかないことは想像に難くありません。しかし、社内や似たような環境で他よりもうまくやっている事例(ポジディブ・ デビアンス)は、抵抗なく受け入れやすいものです。繰り返しになりますが、組織改革のヒントは身近にあり、それに気づくかどうか、そして、それがトップダウンではなく、ボトムアップで従業員自らが発見し、実践を通じて普及させていくことで、行動変容に結びつけられるかどうかに影響することを教えていただきました。
このように、組織内で良い結果を出している少数の従業員(統計用語で言う「外れ値」)の行動を観察して、彼らの行動から学んでいく方法が「ポジティブ・デビアンス・アプローチ(PD)」と呼ばれるものです。実際のPD事例も多数お話ししていただき、あっという間に講演終了となりました。
講演後の質疑応答では、自らのビジネスにPDアプローチをあてはめた場合の質問が多く寄せられ、明日からすぐに実践していこうとする参加者の方々の意識の高さをうかがうことができました。まさに観察即実行のOODAループを体感した所存です。
MBA Cafeでは、会員の皆様が最新の経営理論に触れるセミナーを今後も開催していく予定です。OB・OG諸氏のご協力を引き続き賜れればと考えておりますので、何卒よろしくお願い申し上げます。
そして、ご多忙の中、今回の講師を快く引き受けていただいた原田勉教授に改めて厚くお礼申し上げます。
