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『論語と算盤』輪読会のご報告

 現代経営学研究所では、神戸大学大学院経営学研究科教員による輪読会をZoomによるオンラインで不定期開催しております。

 5月下旬から全11回、月曜日の夜に、原田勉教授による『論語と算盤』 輪読会を開催しました。輪読会を担当した原田教授に所感を寄稿いただきました。

輪読会を終えて 

原田 勉 

 今回の輪読会では、『論語と算盤』を課題図書とし、毎回1章ずつ11回にわたり読んでいきました。この本は渋沢栄一の講演録をまとめたもので、必ずしも体系的、論理的に主張が展開されているわけではなく、各章が独立して読める内容になっています。しかし、そこに一貫しているのが、「論語」や「道徳」がビジネスの基本になるということです。明治時代は、まだまだ「商売人=悪徳商人」というイメージがあり、道徳を遵守することでは商いは成立しないと考えられていました。そのような風潮に対し、すでに実業界で成功を収めていた渋沢が、道徳を基軸としてビジネスを展開してきたからこそ成功したのであり、その道徳を学ぶ最適のテキストが「論語」であると主張したのが本書です。

 昨今、企業の社会的責任やSDGs、ESG投資などが重視され、経済・利益至上主義からの軌道修正が求められているなかで、渋沢が明治時代にすでにこのような主張をしていたのは驚きであり、今でも学ぶことが多い書物だと思います。

 今回は、輪読会に初参加の方も多かったのですが、企業経営者の方が多いのも特徴的でした。毎回、活発なディスカッションが展開され、渋沢のシンプルな主張や前時代的と思われる考え方も、見方を変えることにより、新しい発見や気づきが得られるものでした。毎回、参加者それぞれの体験を踏まえた意見が寄せられ、非常に刺激に満ちた輪読会だったと思います。私自身も多くの学びや刺激を受けることができて感謝しています。ありがとうございました。

 

 

課題図書:ちくま新書 現代語訳 論語と算盤
渋沢栄一 (著)、守屋淳 (訳) 、筑摩書房、2010年

 

 

参加者の声(アンケートより抜粋)

・今回の課題図書を、事前に一人で読んだときはサラッと読めて、実はあまり心に残りませんでした。しかし、輪読会を通じてどんどん関心が深まり、読みの深さがドラスティックに変化しました。特にペアで発表担当として資料を作成する過程で、ネットで調べたり、関連図書を読んだりすることで、理解がグッと深まりました。今回、こうした貴重な体験ができたことに感謝しております。

グループディスカッションのとりまとめ役を担当させていただき、短時間でメンバーの話を咀嚼して発表することがいかに難しいかを感じました。その一方で、よどみなくきれいに話す方がいらっしゃるのを拝見して克服を誓いました。

・早い意思決定・判断を迫られる状況に際して、道徳の概念が道標になるように思いました。

 

 ご参加いただいた皆さまには、アンケートにもご協力いただき、この場を借りてお礼申し上げます。時には欠席者が多数という回もありましたが、そういったことに関係なく毎回、議論が盛り上がっていたような印象を受けました。

 参加者の方から寄せられたコメントにもありますが、輪読会は、課題図書の内容を深く理解することができる場となっています。不定期にはなりますが、今後も輪読会を開催していく予定です。