特集
ファミリー企業の神話と実像
ファミリービジネス研究の可能性

  • 梶原 武久 (神戸大学大学院経営学研究科 教授/ファミリービジネス研究教育センター長)

ファミリービジネス研究教育センター(MUFGウェルスマネジメント寄附センター)

 神戸大学大学院経営学研究科では、伝統的に、経営学、会計学、商学という分野ごとに研究教育を行ってきました。近年、新しい取り組みとして、経営学研究科内部に部局内センターを設置し、異なる分野の研究者が分野横断的に研究教育を始めている。具体的には、ファミリービジネスに関するファミリービジネス研究教育センター、中小企業のM&Aに関する中小M&A研究教育センター、人的資本経営をテーマとする人的資本経営研究教育センターが設置され、それぞれのテーマについて研究教育活動の加速化を図っている。経営学研究科のHPのトップページを開くと、ファミリービジネス研究教育センター中小M&A研究教育センター人的資本経営研究教育センターのタグがあるので、参照してもらいたい。

 私がセンター長を務めるファミリービジネス研究教育センターは、2022年3月に経営学研究科、三菱UFJ銀行、現代経営学研究所の3者間で、ファミリービジネスの持続可能性を高めるための研究教育を加速させることを目的として締結された、包括連携協定に基づき設置されたセンターである。

 これ以降、本シンポジウムの解題として、ファミリービジネスの特徴や学術研究の状況などを紹介しながら、ファミリービジネス研究の意義や可能性について述べる。

ファミリー企業とは

 ファミリー企業とは、「創業者やその一族が企業を所有し、経営に一定の影響力を行使している企業」と一般的には定義される。この定義にも見られるように、創業ファミリーと企業の関係性には、二つの側面がある。一つは創業ファミリーが会社の株式を所有しているかどうかという「所有」の側面である。もう一つは、創業ファミリーの出身者が、社長や取締役などとして経営参画することで、企業経営に対して実質的な影響力を行使しているという「経営」の側面である。創業ファミリーが所有と経営の両方を行う企業もあれば、株式の所有のみで経営にタッチしない企業、あるいは株式はほとんど所有していないが、創業ファミリーの出身者が経営を担当している企業など、多様なファミリー企業が存在する。

 人類の最少単位は家族とされるが、家族の概念は、国や地域によってずいぶん考え方が異なる。そのため家族に関する法規制なども大きく異なっている。学術研究では、概念を明確に定義しなければならないが、実際にファミリー企業を定義することには困難性が伴う。現状では多様な定義が共存しており、ファミリービジネス研究を行ううえでの障害となっている。 

スリーサークルモデル

 ファミリービジネスの特徴を理解するためによく使用されるのが、図1に示すスリーサークルモデルである。「所有」の輪は、法的な企業形態や株式の所有構造などに関するものであり、一般的には、コーポレートガバナンスと呼ばれている。「経営」の輪は、企業が成長しながら収益を上げるために、どのような経営戦略を策定し、どのように実現するかという事業経営そのものに関する問題を扱う。非ファミリー企業では、これらの二つの輪を考えればよいが、ファミリー企業には、もう一つ重要な輪がある。それは創業ファミリーという「家族」の輪である。家族の「輪」では、創業ファミリーが、企業の存在意義や価値観、創業ファミリー出身者と企業の関わり方、創業ファミリー出身者の行動規範など、創業ファミリーとしてのあるべき姿について規定する。これらの三つの輪が重なり合うのがファミリー企業である。三つの輪は、それぞれが個別の独立したものではなく、相互に密接に絡み合っている。このことが、ファミリー企業の企業経営を複雑なものにする。

 さらに、図2は、三つの輪に基づきファミリー企業に関わる多様な利害関係者を表している。①は、創業ファミリーの出身者だが、所有も経営もしていない者を指している。②は、経営に関与しないが、会社の株を所有している創業家出身者、一方、③は、株式を所有していないが経営層や従業員として経営に参画する創業家出身者、④は、経営と所有の両方を担当する創業出身者、⑤は、創業ファミリーの出身者ではないが、株式を所有し、経営にも参画する人々、⑥は、単に株式を保有する一般の株主、⑦は、経営だけに関与するが、創業ファミリーの出身者でもなければ、株を所有しているわけでもない人々を指している。このようにファミリー企業は、企業に対して異なる要求を持つ、多様な利害関係者から構成されている。企業に対して異なる要求を持つ多様な利害関係者の利害をいかに調整するかということが、ファミリー企業の持続可能性の鍵となる。

 図3は、第34回シンポジウムでパネルディスカッションの司会を担当した岡田客員教授が、神戸大学経営学部のトップマネジメント講座(MUFGウェルスマネジメント寄附講義「金融機関のウェルスマネジメント戦略とファミリービジネス」)の資料として使用したスライドである。この図は、時間の経過に伴い、ファミリー企業のスリーサークルモデルがどのように変遷するのかについて示したものである。創業されて間もないファミリー企業では、創業ファミリーの出身者が会社を所有し、経営者や従業員として企業経営に携わるため、三つの輪が重なり合っている。三つの輪の重なり合う領域が多いと、それぞれの意思が整合的なものとなるため、企業経営は安定する。次に、事業が順調に成長して企業規模が拡大し、また、いつまでも創業者が経営者であり続けることも難しいため、世代交代が生じる。この時期から、三つの輪に遠心力が働き分離が始まる。さらに企業が成長し株式市場に上場する頃になると、三つの輪にはさらに遠心力が働き、何もせずに放っておけば、三つの輪の重なる領域は著しく小さくなってしまう。こうなると、三つの輪の意図を合わせることが困難なものとなり、ファミリー企業は不安定な状況に置かれる。企業成長や世代交代に伴い三つの輪が分離していく中で、いかに多様な利害関係者間の利害調整を行いながら企業経営を行えばよいのか。この問題への対処が、ファミリー企業の持続可能性を高めるうえでの重要な課題となる。

 悩み多きファミリー企業

 ファミリービジネス研究教育センターの活動を通じて、ファミリー企業や創業ファミリーの方々から話を聞く機会が増えたが、様々なことで悩まれていることを実感する。まず、ファミリー企業の多くが、事業承継に伴う高い相続税に苦しんでいる。また、時折メディアで注目を集めるファミリー企業のお家騒動や不祥事などによってか、世間にはファミリービジネスに対するマイナスイメージが根強く定着していることも、ファミリー企業の悩みになっている。就職活動を行う学生の中には、ファミリー企業というだけで就職先の候補から外す学生も少なくない。

 事業承継も、ファミリー企業にとっては、避けては通れない悩みの種である。ファミリー企業の中には、創業ファミリー出身者の中から、後継者を見つけられない企業も少なくない。また、仮に後継候補がいる場合であっても、先代から後継者への事業承継は容易ではない。ここ数年でも、カリスマを持つ経営者から後継者への事業承継がなされたにもかかわらず、再び先代が経営者として復帰するケースが後を絶たない。

 また最近、東証の市場区分が変わった。最も上位のプライム市場においては、流動株式比率が35%以上という要件が設けられており、創業ファミリーが株式を多く所有するファミリー企業がプライム市場にとどまることは困難になりつつある。このため東証1部に上場していた多くのファミリー企業が、スタンダード市場に移行したり、あるいは非上場を選択する企業も少なくない。

 以上のように、ファミリー企業を取り巻く環境は厳しさを増しつつある。こうした中で、創業ファミリーの中には、「このまま創業ファミリーが経営に関与し続けるべきなのだろうか」と悩みながら経営にあたる企業がある。また、創業ファミリーが経営参画する意思を持っている場合であっても、「次の50年、100年に向けて、どのように舵取りを行えばよいのか」「次世代以降にどのような形で事業承継すればよいのか」など、ファミリー企業の悩みは尽きない。

ファミリービジネスにまつわる「神話」

 ファミリー企業に関して、巷には、十分に裏付けがないのに古くから語り継がれてきた「神話」があふれている。ファミリー企業に関する代表的な神話の例として、次のようなものがある。

 第1に、「ファミリー企業は、少数派である」という神話がある。アドルフ・バーリとガーディナー・ミーンズによれば、企業が成長するにつれて株式所有の分散化が進み、「所有と経営の分離」が起こるとされる。企業が成長する過程において、所有と経営の分離が起こり、その結果として、ファミリー企業が解消されるというのである。このためファミリー企業は、成長途上にある企業や成長が止まってしまった中小企業に特有の企業形態に過ぎないと考えている人が多い。

 第2に、「ファミリー企業が短命である」という神話がある。古くから、「売り家と唐様で書く三代目」といわれるように、創業者と二代目によって成長を遂げた企業が、経営に専念せずに他のことにうつつを抜かす三代目によって、経営に行き詰まって消え去るというものである。

 第3に、「ファミリー企業は、企業業績が低い」という神話がある。ファミリー企業では、限られた創業ファミリー出身者の中から経営者が選ばれることが多い。こうして選ばれる経営者は、専門的な経営者と比較して能力が低く、その結果、ファミリー企業の企業業績が非ファミリー企業と比較して低いと考えている人が少なくない。

 第4に、「ファミリー企業は、閉鎖的で反社会的である」という神話がある。時折メディアによって誇張して報道されるファミリー企業の不祥事や事件を目の当たりにして、多くの他のファミリー企業でも、同様のことが行われているのではないかと考える人も少なくない。

 以上に挙げた神話は、客観的な証拠や裏付けがないまま、世間に広く受け入れられている。こうした神話について、科学的な手続きに基づき検証することが、ファミリービジネス研究の一つの重要な役割となる。

ファミリービジネス研究の展開

 経営学領域において、ファミリー企業を対象とした研究は、中小企業研究、老舗企業研究、歴史研究などとして行われてきたものの、必ずしもメインの研究テーマにはされてこなかった。多くの経営学者が、ファミリービジネスという企業形態をどちらかというと後進的で、中小企業に限ったものと考えてきたことがその理由の一つである。しかし、近年、ファミリービジネスに対する学術研究の機運が高まっている。海外では、2000年代以降、ファミリービジネスに関する研究が盛んに行われるようになっている。日本においても、2000年代後半頃に、ファミリービジネス学会が設立されるなど、ファミリービジネスが経営学における重要な研究テーマであるとの認識が広まりつつあり、多様な分野から多くの研究者が参入している。

 以下では、これまでのファミリービジネス研究の成果を簡単に紹介する。まず、「ファミリー企業は、少数派である」という神話があったが、スイスのザンクトガレン大学の研究によれば、世界中において、ファミリー企業が8兆200億米ドルの収益を上げ、世界中で2450万人の従業員を雇用していることが示されている(https://familybusinessindex.com/)。このデータは、今日のグローバル経済におけるファミリー企業のプレゼンスが大きいことを示すものである。

 また、「ファミリー企業は、企業業績が低い」という神話があったが、この点については、多くの先行研究がファミリー企業と非ファミリー企業の企業業績の比較を行ってきた。ファミリー企業の定義によって研究結果が変わるが、先行研究はおおむねファミリー企業が非ファミリー企業と遜色のない企業業績を上げていることを示している(e.g, Villalonga & Amit, 2006)。

 先行研究は、ファミリー企業と非ファミリー企業の間に様々な行動様式の違いがあることを明らかにしている。例えば、ある研究では、非ファミリー企業は、売上高や需要が不確実になると設備投資を抑制するが、ファミリー企業は不確実性が高まっても、我慢強く設備投資を継続することが示されている(淺羽・山根、2022)。

 別の研究では、アジアの金融危機やコロナ禍のような多くの企業に影響を及ぼす大規模なショックが生じた場合に、非ファミリー企業の企業業績は一気に悪化し、その後、労働コストの圧縮が行われる傾向が強いのに対して、ファミリー企業はアントレプレナーシップを発揮することで、設備投資を迅速に圧縮するなど、雇用を守りながら企業業績を維持していることが示されている(沈、2022)。

 さらに、「ファミリー企業は、閉鎖的で反社会的である」という神話があるが、近年の研究によれば、ファミリー企業が非ファミリー企業と比較して、環境問題や社会問題に対してより積極的な取り組みを行っていることが示されている(e.g, Berrone et al., 2010)。

ファミリー企業の理論

 以上のように、先行研究はファミリー企業と非ファミリー企業の間で行動様式の違いがあることを明らかにしている。なぜファミリー企業は、非ファミリー企業とは異なる行動をとるのであろうか。この点を説明するために様々な理論が提案されてきた。以下では代表的な三つの理論を紹介する。

 第1の理論は、エージェンシー理論である。所有と経営が分離している一般の企業では、所有者の目的と経営者の目的が必ずしも一致しない。その結果、経営者が所有者の目的を犠牲としながら、個人的な目的を追求することで、エージェンシーコストが発生する。また、所有者はコーポレートガバナンスや経営者に対する報酬制度などを通じて、経営者が所有者の目的と整合した行動をとるよう働きかけなければならない。これに対して、ファミリー企業では、所有と経営が一致している場合が多い。その結果、ファミリー企業ではエージェンシーコストを削減できるため、企業業績が高まるとされる。ただし、エージェンシー理論によれば、ファミリー企業はワンマン経営となりやすく、創業ファミリー以外の少数派の株主の利害が軽視されるという問題が生じやすいとされる。

 ファミリービジネスに関する第2の理論は、社会情緒的資産維持理論である。社会情緒的資産維持理論によれば、ファミリー企業の目的は経済的なリターンの最大化ではなく、社会情緒的資産(socioemotional wealth)と呼ばれる、創業ファミリーが事業から受け取る様々な非財務的な効用の最大化にあるとされる。社会情緒的資産には、同族企業における支配と影響力の維持、長く続く名門の一族としての感覚、企業への一体化とその評判への関心、企業への感情的な愛着、固い社会的なつながりなどが含まれる。こうした社会情緒的資産の維持・拡大を重視するファミリー企業は、長期的な視点から、従業員、取引企業、地域社会との関係を重視しながら経営を行う傾向があるとされている。一方、社会情緒的資産維持理論によれば、ファミリー企業は、永続性や安定性が過度に重視されるあまり、グローバル化や多角化などに関するリスクを取ろうとしないとされる。

 ファミリー企業に関する第3の理論は、資源ベース理論である。資源べース理論では、ファミリー企業の競争力の源泉を、ファミリー性(familiness)に求める。ファミリー性とは、家族、その出身者事業間のシステム的相互作用によってもたらされる特定のリソースなどが資源の束であり、それが持続的な競争優位の源泉となる。ファミリー性は、長い時間をかけて獲得されるものであるため、競合企業が容易に模倣することはできない。逆に、ファミリー性が弱まったり、うまく承継されないのであれば、ファミリー企業としての競争力を維持することは難しく、そもそも創業ファミリーが経営に関与することに積極的な意義は薄れる。上述のとおり、企業成長や世代交代に伴い三つの輪が次第に分離する中で、ファミリー性をいかに維持・強化するかということが、ファミリー企業の競争優位性や持続可能性に対して重要な課題となる。

 他にも、ファミリー企業の行動を説明する理論として、様々な理論が提唱されている。これらの理論は、いずれも相互排他的であるというより、複雑なファミリー企業の行動の異なる側面にフォーカスを当てている。このため、複雑なファミリー企業の経営行動を解明するためには、特定の理論に依拠するだけでなく、学際的に研究を推進する必要がある。

ファミリービジネス研究の可能性

 ファミリービジネスの先行研究は、重要なことをいくつか示唆している。第1に、先行研究は、ファミリー企業と非ファミリー企業の行動様式に違いが見られることを示している。第2は、もっと重要なことであるが、先行研究は、ファミリー企業でなければできない企業経営があるということを示唆している。非ファミリー企業の経営者の任期は、せいぜい3~5年程度であり、上場企業であれば投資家の求める短期的な利益を常に気にしながら経営を行わなければならない。これに対して、ファミリー企業の経営者の任期は、それよりはずっと長く、また短期的な利益に敏感になり過ぎることなく、20年先、50年先、100年先を見据えて企業経営を行うことができる。超長期を見据えて、経済的パフォーマンスのみならず、従業員、地域、取引会社などとの良好な関係を構築・維持しながら行うファミリー企業の経営は、欧米流の経営とは異なる日本型の経営モデルとして、今日においても、多くの企業にとって模範となりうると考えられる。「このまま経営に関与し続けるべきなのだろうか」と悩みながら経営をしている創業ファミリーの方には、自信を持って経営にあたって欲しい。

 日本には、先の大戦前後に創業され、経済発展とともに急成長を遂げたファミリー企業が多くあり、日本経済の原動力となってきた。そうした企業の多くが、カリスマを持つ経営者に率いられ急成長を遂げてきたが、世代交代の時期を迎えつつある。これらの企業が事業承継につまずくと、日本経済にも大きな悪影響が及ぶものと懸念される。

 ファミリービジネス研究教育センターでは、ファミリービジネスに関する学術研究を加速化させることで、ファミリー企業の健全な成長と持続可能性を高めることに貢献したいと考えている。日本のファミリービジネス研究は、データベースが整備されていないこともあって、海外に比べて遅れている。また、多くが少数企業を対象とした個別的な事例分析にとどまっている。さらに、ファミリー企業というと中小企業をイメージされることがある。中小企業の研究も大事であるが、一方で規模の大きいファミリー企業も日本には多く存在している。これらの企業についても、研究対象としていく必要がある。

ファミリー企業の実像を知る

 どの研究分野にも共通することだが、研究で大事なことは、好奇心を持ちながら研究対象をよく観察することである。優れたファミリービジネス研究を行うためにも、ファミリー企業の行動様式や抱えている経営課題などを、注意深く観察し理解する必要がある。第34回シンポジウムでは、今後のファミリービジネス研究に向けて、ファミリー企業の実像を知るという趣旨を掲げ、異なるタイプのファミリー企業から立場の異なる創業ファミリー出身者の2人にご登壇いただいた。1人目の講演者は、京都にある測量機器メーカーである堀場製作所の常務執行役員で、株式会社堀場エステックの代表取締役である堀場弾氏である。堀場氏は、堀場製作所の創業者堀場雅夫氏の孫、現会長堀場厚氏の長男で、今後、創業ファミリーの出身者として、堀場製作所の経営にも深く関わっていかれることが期待されている。2人目の講演者は、「業務スーパー」でなじみのある株式会社神戸物産を創業者として一代で築き上げた沼田昭二氏である。神戸物産の経営を長男の沼田博和氏に引き継ぎ、現在は、日本の将来の食料自給率の向上や純国産再生可能エネルギーによるエネルギー自給率向上を目標に掲げ、株式会社町おこしエネルギーを設立し、新規事業に挑戦している。高度な技術に基づくモノづくりで成長してきた堀場製作所とユニークなビジネスモデルで急成長を遂げた神戸物産、また創業ファミリーの出身者として、今後事業を引き継ぐ側の堀場氏とすでに長男に事業承継を終えた沼田氏は、様々な点で対照的である。2人の講演とパネルディスカッションを通じて、ファミリー企業の実像に対して理解を深める貴重な機会となった。

 ファミリービジネスに関する実像を知るためにも、シンポジウムの開催記録とあわせて読んでいただきたい。


<参考文献>

  • 淺羽茂・山野井順一(2022)『ファミリー企業の戦略原理:継続と革新の連鎖』日経 BP 日本経済新聞出版
  • 沈政郁(2022)「家族企業とアントレプレナーシップ:反脆弱性」組織科学、第56巻第2号、pp.27-42
  • Berrone, P., Cruz, C., Gomez-Mejia, L. R., & Larraza-Kintana, M. (2010). Socioemotional wealth and corporate responses to institutional pressures: Do family-controlled firms pollute less? Administrative Science Quarterly, 55(1), 82-113. https://doi.org/10.2189/asqu.2010.55.1.82
  • Gómez-Mejía, L. R., Haynes, K. T., Núñez-Nickel, M., Jacobson, K. J., & Moyano-Fuentes, J. (2007). Socioemotional wealth and business risks in family-controlled firms: Evidence from Spanish olive oil mills. Administrative Science Quarterly, 52(1), 106-137.
    https://doi.org/10.2189/asqu.52.1.106
  • Villalonga, B., & Amit, R. (2006). How do family ownership, control and management affect firm value?. Journal of Financial Economics, 80(2), 385-417.  https://doi.org/10.1016/j.jfineco.2004.12.005
  •  https://familybusinessindex.com/