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MBA Cafe活動報告 「直近修了生によるM1生向け論文作成ノウハウ共有会」
去る2024年3月5日、MBA Cafe主催で「直近修了生によるM1生向け論文作成ノウハウ共有会」を執り行いました。平日の夜ということで、ZOOMによる遠隔イベントの形式をとらせていただきました。社会人学生である参加者の方々にとっては、ご自身の業務やレポート作成に追われる中での貴重なお時間であるにも関わらず、総勢56名もの方々にご参加いただきました。
本会の開催趣旨としては、これからMBA論文の作成に本格的に取り組まれる現役学生の皆さんに対して、MBA論文として求められているものは何か、具体的にどのようなプロセスで研究を進めればよいのか、というヒントを実体験に基づく事例紹介という形で提供するというものです。昨年の9月に修了された修了生の中から、各所属ゼミの指導教授よりご推薦いただいた岡藤直嗣さん(三品ゼミ)、篠田知佳さん(上林ゼミ)、渡邊幸代さん(黄ゼミ)、菅野英介さん(藤原ゼミ)、多田章彦さん(原田ゼミ)の5名の方々より、ご自身の研究内容と論文作成に関する体験談をお話しいただきました。
前半のパートでは、1人20分間で自身の研究内容についてプレゼンテーションしていただきました。岡藤さんからは、ご自身が所属されている鉄鋼製造会社のカーボンニュートラル戦略に関する事業展開についての建議書をご紹介いただきましたが、研究内容だけではなく、御大である三品先生の偉大さを熱くプレゼンテーションされているのが非常に印象的でした。篠田さんからは、ご自身が所属されている製薬会社における人材マネジメントが企業業績にどのように影響しているのかを、「ぬるま湯組織」というパワーワードを用いて整理された研究についてご紹介いただきました。論文作成の進め方についてもさることながら、経営学修士を修めた次のステップとして何をするか、というさらに先の展望についても、興味深い話題を提供いただきました。渡邊さんは、ご自身が所属される鉄道会社のブランド戦略を研究テーマに選択されましたが、事例研究対象として一般的な営利企業ではなく「尼崎市」や「広島カープ」といった組織を対象としており、ブランド戦略の共通点としてまさに「なるほど」と思わせる興味深い視点をご提供いただきました。菅野さんは、ご自身のコンサルタント業務のクライアントである大学組織に焦点を当て、地方大学における立地所在地の都市力と、大学の学生を集める力の関係性について解き明かされました。研究を進める中で生じたリサーチクエッションそのものへの疑問に対して、副査の先生や外部の先生とのディスカッションを繰り返すことで、より昇華させることができたプロセスは、現役学生の方々にとってとても参考となる話題であったと思います。多田さんからは、ご自身が所属される老舗製造業における新規事業開発について、その成功要因は「積極的な逸脱行動人材」にあるのではないかと仮説を立て、インタビュー調査に基づく分析を試みた研究をご紹介いただきました。綿密に練られた論文作成計画とその予実管理は圧巻で、「最終的に80,000字になりました」というお話は多くの方々の心をへし折ったことと思います。皆さんの研究内容はどれもユニークで示唆に富んだ結論が導き出されているものでしたが、その結論に到達するまでにどのような紆余曲折や苦悩があったか、何がターニングポイントとなって道が開けたのか、どのような計画を立てて論文を仕上げていったのか、などのリアルな実体験は、現役生の皆さんにとって論文提出までのロードマップをイメージする上でとても役立つ情報になったのではないかと思います。
後半パートでは、発表者の方々にそれぞれ5つのブレークアウトルームに分かれていただき、30分間の個別相談会を行いました。現役学生の方々からは、どのようにインタビュー相手を探していくべきか、自身の研究が「当たり前のこと」を解き明かすだけの研究にならないためにはどのようにするべきか、などの様々な具体的な疑問、相談事項が投げかけられ、活発な質疑が行われました。多くの方々は定刻の夜10時まで参加されており、熱量の高さをうかがい知ることができました。
開催後のアンケート結果からは、皆さん概ね期待された話題を聞くことができたとの回答をいただきました。また各発表者の方々のスライドを提供してほしいという問い合わせを、非常に多くの方々からいただくなど大変好評でした。本会の目的であった、現役学生の方々の論文作成に向けた疑問、不安の解消は達成できたのではないかと思います。
本イベントを俯瞰してみれば、MBA修了生の論文作成ノウハウという属人的な知識が、本会の発表を通して表出化された知識となり、現役生の方々と共有されることによって新たなノウハウが形成される知識創造プロセスがまさに行われた場だったのではないかと思います。世代を超えて、この知識の循環が繰り返されることで、神戸大学MBA生の修士論文のレベルはさらに高まっていくのではないかと期待します。MBA Cafeがそのような役割となるべく、来年度以降も継続していきたいと思います。

