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『「価値」こそがすべて!』輪読会のご報告

 現代経営学研究所では、神戸大学大学院経営学研究科教員による輪読会をZoomによるオンラインで不定期開催しております。

 原田勉教授による『「価値」こそがすべて!』 輪読会は、6月から前編として課題図書の第1・2部を対象に全9回、8月下旬から後編として第3~6部を対象に全11回、火曜日の夜に開催しました。後編は前編の参加者に限定し、全20回、開催期間は約5か月間の長期にわたりました。

 輪読会を企画した原田先生に所感を寄稿いただきました。

輪読会を終えて 

原田 勉 

 今回の輪読会では、『「価値」こそがすべて!』を課題図書とし、前編9回、後編11回と期間を分けて、合計20回かけて毎回1章ずつ読んでいきました。この本は経営戦略についてバリューベースという観点からまとめたものであり、私が読んだ戦略の本のなかで最も優れているものの1つです。しかし、日本ではまだこの考え方があまり知られていないため、多くの方にバリューベース戦略を知っていただき、深く理解していただきたいという思いから、私自身が翻訳し、2023年に出版いたしました。また、この長丁場にわたる輪読会も、同じ趣旨で開催しました。

 現代経営学研究所での輪読会は、これで4回目であり、過去の輪読会にもご参加いただいた方が多数でしたが、その一方、今回、3割ほどは新たにご参加いただいた方でした。参加者の多くは本学または他大学のMBA修了生だったため、経営戦略に関する基礎的な知識は皆さんお持ちのようでした。しかし、バリューベース戦略は大半の方が初めてだったようで、皆さん新たな発見や気づきがあったように思います。

 初回および最終回は私が講義のようなかたちで進めましたが、それ以外の回はすべて参加者数名による担当制で実施しました。担当者には、毎回レジュメおよびディスカッションテーマ2つを用意してもらい、最初の10分で担当チャプターの概要を説明し、私が補足説明を5分程度行いました。その後、40分ほどディスカッションテーマについてグループ討議を行い、全体討議、質疑応答を行うというスタイルで実施しました。

 午後7時半から開始し、午後9時で一旦終了し、その後、残ったメンバーで9時半まで質疑応答やディスカッションを続けていました。参加者の大半は最後まで残り、毎回、熱心に議論することができました。私自身も多くの学びや刺激を受けることができ、感謝しています。

 5か月にわたって毎週火曜日に皆さんと輪読会をするというのは本当に楽しい経験でした。期間中、この輪読会があることを楽しみにしておりましたし、多様なバックグラウンドを持った方々と密に交流できることは、通常の大学院の授業では味わえないことでした。今後も機会があれば同様の輪読会を実施し、社会人の方々の学びの場を微力ながら提供できればと希望しています。参加者の皆さんには、貴重な学びの場をともにつくりあげていくことができ、感謝しています。ありがとうございました。

 

 

課題図書:「価値」こそがすべて!
フェリックス・オーバーフォルツァー・ジー (著)、
原田 勉 (訳) 、東洋経済新報社、2023年

 

 

参加者の声(アンケートより抜粋)

・輪読会で難しいのはファシリテート。グループディスカッションの内容を適切にまとめるのは緊張感を伴う作業です。鍛えられると言えばそうですが…。今回の課題図書は、これまでに学習してきた経営学の知識が使いやすい形で整理されたような内容だったので、取り組んでいて毎回新鮮な気分になりました。今後、事業の分析を行う際には、今回学習したフレームワークを参照させていただきたいと思います。

・輪読会に初参加させていただきました。年齢や業種の異なる参加者の皆さまとのグループ討議を通して、自分の思考を広げる大切さを学びました。また課題図書から現業を捉え直すことができ、仕事に対するモチベーションを上げることにつながりました。

・課題図書を単純に理解するのは難しかったですが、先生から説明いただき理解が深まりました。日々の現場から離れて学ぶことで、いろいろヒントをいただきました。

・なかなか論述的に社内で討論することはないので、とても新鮮で勉強になりました。実践では現場感覚に置き換えて落とし込んでいく必要がありますが、WTSの概念は現在の自社にはないので、とても勉強になりました。

・はじめての参加でしたが、一人で書籍を読むより内容の理解が深まったと感じています。自身の担当の章のアウトプット、参加者とのディスカッション、先生からのフィードバックが効いてるのかと。また機会があれば参加いたします。

 ご参加いただいた皆さまには、アンケートにもご協力いただき、この場を借りてお礼申し上げます。時には欠席者が多数という回もありましたが、そういったことに関係なく毎回、議論が盛り上がっていたような印象を受けました。

 参加者の方から寄せられたコメントにもありますが、輪読会は、一人で読むより課題図書の内容を深く理解することができるような場となっています。不定期にはなりますが、今後も輪読会を開催していく予定です。企画が固まりましたらご案内いたしますので、関心がある輪読会がありましたら、ご参加検討いただけますと幸いです。