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サイエンス・カフェ(経営学)のご報告
神戸大学経営学部では、主として高校1・2年生を対象としてサイエンス・カフェ(経営学)をZoomによるオンラインで開催しています。第5弾として12月年末に開催し、当研究所が事務局を担当しました。

第5弾は、12月26日、27日に以下のような内容で開催しました。
12月26日(木)
テーマ:「経営学部」って何なんすか問題
講 師:結城 祥 准教授
概 要:経営学、会計学、ファイナンス論、マーケティング論・・・、何がどう違うの?そもそも、高校での勉強と大学での勉強は、何が違うの?「お金の流れ」と「実学」というキーワードから、これらの疑問にお答えします。
12月27日(金)
テーマ:財務諸表分析のすすめ
講 師:北川 教央 教授
概 要:就職先を探したり、投資対象の銘柄を選んだりする際に、企業の実態を詳しく知りたいと思うことがあるかもしれません。このような場面で活躍する分析ツールの1つである、財務諸表分析について紹介します。
今回も担当いただいた講師から所感を寄稿いただきました。
サイエンス・カフェを終えて
結城 祥
今回のサイエンス・カフェでは、「『経営学部』って何なんすか問題」と題して、経営学、会計学、ファイナンス論、マーケティング論の特徴を説明しました。
各学問領域の関連や違いを俯瞰するために、1つの工夫をこらしました。それは貸借対照表と損益計算書を利用することです。会計学は、これらの財務諸表を作成したり、会計情報を経営に生かすための学問です。ファイナンス論は、貸借対照表の資金調達や投資について考えます。経営学の競争戦略論は、損益計算書の利益をどのように増やすかを究明します。そしてマーケティング論は、損益計算書の売上を効果的に創出する方法を考える領域です。
以上のお話は、まったく大した内容ではありませんし、不正確な部分も含まれているかもしれません。しかし (1) 貸借対照表と損益計算書を並べて、(2) 企業活動をお金の流れから表現し、そのうえで (3) 各学問がどこをカバーしているかを示すという方法は、思いのほか説明しやすく、かつ理解しやすいやり方です。加えてこの方法は、企業 (人間) の「行為」が、なぜ、どのように財務諸表上の「数字」に化けるのかをイメージする上でも役に立ちそうです。
講義の最後に、1つクイズを出しました。それは名前を伏せたまま、某テーマパークの貸借対照表を見せ、その情報から企業名を当てよ、というものでした。チャット上では様々な回答が上がりましたが、なんと10名程度の参加者が正解にたどり着けました。1時間強の講義でしたが、参加してくださった高校生の皆さんは、内容をよく理解してくれたように思います。マーケティング論を専門とする私自身も、講義を準備する過程で隣接領域との関連や異同を復習することができました。「一を聞いて十を知る」という故事成語がありますが、教育は反対に「十を知って初めて、なんとか一を教えることができる」ということを痛感した次第です。
サイエンス・カフェを終えて
北川 教央
「財務諸表分析のすすめ」と題し、財務諸表分析の楽しさと意義をお伝えすることを主目的とした講義を行いました。多くの参加者が高校1・2年生であり、文理分けや学部選択などの問題に直面していることを考え、特定の学術的な話をするというよりも、この分野でどのようなことを学べるのかについて広く情報提供することを心掛けました。
講義の前半では、経営学が組織の経営に関する諸問題を科学的に解明する学問であることを説明するとともに、経済学、心理学、社会学といった隣接する学問との関係について簡単に述べました。その後、経営学に含まれる経営学分野、商学分野、および会計学分野で、それぞれどのようなことを学べるのかについて例示しました。
後半では、会計学分野に焦点を絞り、財務諸表がどのようなものであるかを説明したうえで、クイズを交えながら、財務諸表分析によって初めてわかる企業実態があることを説明しました。自らが投資者、債権者、規制当局、就活生など、企業の情報を必要とする立場となったときに、財務諸表分析が有益な分析ツールの1つになりうることを、参加者の皆さんに感じていただけたのであれば幸いです。また講義の最後では、財務諸表分析に関する職業専門家として証券アナリストなどを紹介し、財務諸表分析の修得によって職業選択の幅が広がることにも触れました。
質疑応答のパートでは、KIBERプログラムといった神戸大学のカリキュラムに関わるものから、進路選択や学生生活全般に関わるものまで、参加者の皆さんから多岐にわたる質問をいただきました。なかには株価収益率(price earnings ratio: PER)を利用して投資戦略を策定する際の注意点やEBITDA(earnings before interest, taxes, depreciation and amortization)の内容など、専門的な質問もありました。参加者の皆さんの関心の高さがうかがえ、担当講師としても大変うれしく思いました。
両日とも、講義中に講師が投げかける質問に対して、参加者の皆さんが積極的に回答をチャットに書き込んでくださったり、後半の質疑応答でもたくさんの質問が寄せられました。担当講師が、時に自身のエピソードを交えて、ていねいに率直な考えを述べてくださいました。寄せられた質問には、進路を選択した経緯や日常生活で目を向けるとよいこと、留学プログラムについてなどがあり、指定の時間に回答しきれないほど双方のやりとりが続きました。サイエンス・カフェでのお話が、担当講師から参加してくださった皆さまへのエールとして届き、経営学についてより関心を抱いていただける場となれば幸いです。
