経営フロントライン
withコロナ時代の経営学
今日、コロナ危機の影響を受けて、介護福祉や教育現場、各地域での経済活動が注目されている。企業ではリモートワークが進展し、人事制度改革、情報ネットワークの活用など様々な課題が現れている。これらの社会変化に対して、新たな経営手法を確立していくことは実践的に重要である。
同時に、コロナがもたらす社会変化は経営学説そのものにも大きな価値転換をもたらしうる。経営学の諸学説は、これまで大きな環境変化や産業発展の中で現実の課題への応答として形成されてきた。たとえばテイラーの科学的管理法は19世紀末のアメリカの産業化の急速な進展の中で提唱されたものであり、バーナードの組織論的管理論は20世紀初めの世界恐慌や全体主義の台頭の中で、個人の主体性を活かした組織マネジメントの論理を探求したものであった。
では、withコロナ時代における経営学はどういった価値志向で社会に理論枠組みを提供しうるのか。社会傾向として分散・多極化が進むともいわれる。実際、働く場としての組織では機能集約化から分散化、ネットワーク化が進み、階層的な組織構造が解体されつつある。こうした動きは、これまでの合理主義的な価値志向やグローバル一元主義からの変容の契機となりうる。経営学説史を研究する者として、こうした問題に対して、これまでの経営学説とその歴史的背景を紐解きながら丁寧に考察していきたい。
