第31回 シンポジウム
日本型コーポレートガバナンスの課題と展望

日時/2020年11月29日(日)13:30~17:00
場所/Zoomによるオンライン開催

講演

1.「日本企業のコーポレートガバナンス ―JFEグループのガバナンス」
     林田 英治氏(JFEホールディングス株式会社 特別顧問/
                    日本経済団体連合会金融・資本市場委員会 委員長)

2.「二つのコードの設定と課題」
   川北 英隆氏(京都大学大学院経営管理研究部 特任教授/
                                                              京都大学 名誉教授)

パネルディスカッション

<パネリスト>
 林田 英治氏、川北 英隆氏

<司   会>
 鈴木 一水(神戸大学大学院経営学研究科 教授)

講演1「日本企業のコーポレートガバナンス-JFEグループのガバナンス」

林田 英治氏
(JFEホールディングス株式会社 特別顧問/日本経済団体連合会金融・資本市場委員会 委員長)

 JFEホールディングスの林田です。まず、簡単に私の自己紹介をさせていだきます。現在、経団連の金融・資本市場委員会の委員長および会計ルールを設定する財務会計基準機構の理事長をやっています。今日はJFEグループの事例を紹介しながら進めたいと思います。あらかじめお断りしておきますが、今日、お話しするのは私の個人的な見解であり、JFEホールディングスや経団連や財務会計基準機構の考え方と100%一致するものではないということを申し上げます。

 最初にJFEグループについて簡単にご説明した後、JFEグループのガバナンス体制がどのように変化してきたか、これがガバナンス・コードとの関連でいかがであったか、最後にガバナンスに関するトピックスについて、私の考え方を紹介させていただきたいと思います。

JFEグループの概要
 まず、JFEグループの概要です。18年ほど前に川崎製鉄と日本鋼管の2社が経営統合しまして、JFEホールディングスという会社ができました。このJFEホールディングスは、純粋持株会社の形態をとり、その傘下にいろいろな事業を持っています。社名「JFE」の由来は、「J」がJapan、「F」が鉄鋼、鉄の元素記号Fe、それと「E」は、もう一つの事業の柱でありますEngineeringです。統合に際して定めた企業理念が、「常に世界最高の技術をもって社会に貢献します」というものであります。これは単なるお題目ではなしに、SDGsとの関連について、後ほど改めて触れさせていただきます。

 事業の概要についてお話しします。一番大きいのは圧倒的に鉄鋼部門です。連結の売上高は2019年度の実績で3兆7000億円程度、鉄鋼部門がおおよそ7割を占めます。それに二つ目の柱でありますエンジニアリング、さらに鉄鋼製品を扱うのが主ですが、それ以外の事業も手がける商社部門、この三つを傘下の事業会社とするグループです。もう一つ、持分法の適用会社ですが、これは日本で2番目の規模を誇るジャパンマリンユナイテッドという造船会社です。これにはいろいろと紆余曲折がありますが、現在は半分弱を持っていて、IHI(石川島播磨重工業)との合弁の会社です。

 鉄は自動車、エネルギー、鉄道のレール、船を造るのに使います厚板などを作っていまして、鉄鋼生産は日本で2番目の2700万t、世界で12番です。事業所は、千葉と神奈川県川崎市にあります東日本製鉄所、そして西日本製鉄所は岡山県倉敷市と広島県福山市にまたがります大製鉄所です。全国の粗鋼生産が昨年は約9800万tでしたが、その20%弱を西日本製鉄所で、7%強を東日本製鉄所で作って、トータル27%という国内シェアであります。

 エンジニアリングは主に「環境」「社会インフラ」「エネルギー」の三つの分野をカバーしています。今、一番大きくなっていますのが、環境プラントです。ごみの処理または汚水処理のプラントを造る、造って供給する、さらに、そのプラントを運営します。こういう事業も民営化が進んでいますので、十数年、20年にわたって運営し自治体のコストを下げることに貢献しています。二つ目の分野が社会インフラで、一番分かりやすいものでは橋です。エネルギー関連でいいますと電力。これは再生可能エネルギーを含めたプラントと発電そのものがあります。あとはエネルギープラント、石油ガスなどを扱っています。

 次に、商社部門。これは鉄鋼の原料、鉄鋼の製品を扱う以外に食品等、鉄以外のものも扱っています。鉄や原料のトレードを通じて生まれる収益と、それ以外の事業、鉄鋼の加工と流通を事業として収益を上げるというビジネスモデルです。

 最後に造船を申し上げましたが、ユニークなものでいうと南極観測船は代々、ジャパンマリンユナイテッドで、昔はその前身の日本鋼管で造ってきました。こういった事業で成り立っています。

純粋持株会社の役割
 先ほど純粋持株会社と申し上げましたが、実はこれが今日の一つのテーマになるかと思います。純粋持株会社の役割は何なのかということを、経営統合する以前から非常に議論しました。

 私たちが今、純粋持株会社の役割としてあげているのは四つの機能であります。それは、事業ポートフォリオの構築、ファイナンス、そしてガバナンス、さらには企業情報の開示:IR(Investor Relations)・SR(Shareholder Relations)です。この四つの機能に特化する。そして、部としては四つの部を持って、人員の規模は持株会社で40人という、四つの機能、四つの部、40人というのを一つの形としてずっと取り組んできました。具体的に言いますと、事業ポートフォリオは企画部、ファイナンスは財務部、ガバナンスは総務法務部、そして企業情報の開示を扱うIR・SRはIR部、この四つの部でやっています。なぜ、この四つに限っているかといいますと、持株会社は機能を徹底して絞り込まないと、組織の肥大化、グループの中での組織の重複を招くと思うからです。純粋持株会社がいろいろなことをやろうとすると、どんどん事業会社の領域に入り込んでしまう。そうすると重複が起き、無駄が出てくるので、この四つに特化しています。

 私どもは創業当初から、IR・SRを含めた「R」に非常に重点を置いて、これ以外の「R」でいえば、従業員との関係のエンプロイーリレーションズ、お客さまとの関係のカスタマーリレーションズ、そして地域社会ソサエティとの関連という意味ではパブリックリレーションズ、カスタマーリレーションズのみならず、SCRと言われるサプライチェーンリレーションズも非常に重要視しています。ただ、エンプロイーリレーションズやパブリックリレーションズは、事業会社の仕事です。それぞれの事業の立地する場所、マーケット、この責任は全て事業会社が負うのが基本です。

 これがわれわれのガバナンスの一つの形なのですが、事業ポートフォリオは、今年7月に経済産業省が中心となって、事業再編実務指針となる「事業ポートフォリオと組織の変革に向けて」と称するガイドラインをまとめました。その検討の中で事業ごとのROIC、またはROE等々を分析して、事業の価値を見極め、評価などしていますが、こういうものは普通の企業であれば何十年もやっていることで、新たに「コーポレートガバナンスとしてこういうことも加えろ」と外から言われるものではないと思います。

 その実例として、私どもは元々スタートしたときには、鉄鋼、エンジニアリング、それから日本全国に持っていた土地を再開発する都市開発と、1990年ごろから川崎製鉄で取り組んできた半導体、それとJFE技研という各事業に共通の基盤研究をする研究所を設立しました。しかし、都市開発は遊休地を活用してビジネスをやってきましたが、遊休地の処分が終わった時点で、当社で仕入れて不動産事業をやるには非常にリスクが高いためやめました。残っている事業は少しありましたが、これはJFEスチールの不動産部で細々とやっています。共通基盤研究もできるだけ事業に近いところでやった方がいいということで、必要なものはエンジニアリング等に移管した上で、基本的には鉄鋼研究所に吸収しました。

 このときに子会社として入ってきたのが造船です。これは元々日立造船とJFEで、半々で合弁をやっていたのですが、業績が非常に厳しくてJFEグループが日立造船から株を35%ほど引き取って、さらに再編を進めるということで一時的に子会社にし、ユニバーサル造船を再構築しました。

 半導体は何とか業績はプラスで、なおかつ投資も巨額になるので、工場は持たないソフトだけの会社になったのですが、規模からして先行きは非常に厳しいということで、この事業は2012年に専業のメガチップスに譲渡しました。ジャパンマリンユナイテッドもIHIさんと統合して子会社でなくなった等々、こういうことを通じてポートフォリオの再構築を継続してやってきました。

ガバナンス体制の変遷
 では、純粋持株会社は、どうやって事業会社をコントロールするのか。40人ほどの規模で、四つの機能だけでといったときに、JFEホールディングスは金融の統括会社として、借入、社債の発行等で資金を調達して事業会社にお金を配分していく金融を、事業会社をコントロール、グリップするツールとして使っています。

 以上、紹介とガバナンスを兼ねてお話ししました。事業会社の独立性を持たせながら、グリップを持株会社が握る手段としてお金、ファイナンスがあるということで、ここからガバナンスについて話していきます。

 JFEグループが具体的にどういう体制を構築して、運営面でどういう工夫をして実効性を上げているかを説明します。これから先、次の世代の人たちが時代に合った体制を構築していくと思いますが、私が役員から社長時代を通じてやってきたガバナンス体制の変化や、今までやってきたことをお話しします。

 まず、機関設計です。私どもは「ハイブリッド型監査役会設置会社」と自分たちで評価をしています。何をもってハイブリッドかというと、私のこだわりもあるのですが、監査役の独立性は非常に大事だと思っています。監査役、監査役会の独立性を維持した上で、かつ監査役も取締役と同等に取締役会等のいろいろな会議において、単に監査役の立場としての発言ではなしに、取締役の立場としての発言でも構わないのでしていただきたい。最終的には監査役の責任を全うしていただくのですが、そのためには、やはり取締役と監査役が対等に議論する。または、取締役だけではなくて監査役会、監査役は執行系とも対等に議論をして、一つひとつの答えを見つけ出していく必要があると思います。

 もう一つ、監査役会設置会社でありながら、取締役会の下に任意の諮問機関である指名委員会、報酬委員会を作っています。この指名委員会、報酬委員会にも監査役会のメンバー、社外監査役が入っています。今、社外監査役2名が指名委員会に入っていますし、報酬委員会にも2名の社外監査役が入っています。これによって、委員会設置会社のいい部分もとり入れていると自負しています。

 それと、純粋持株会社制をより実効性あるものにするために、持株会社と事業会社の役員の兼任をやっています。持株会社の代表取締役副社長(CFO)は、最も大きな事業である鉄鋼事業の取締役も兼ねています。そして、今、再編途上にあります造船事業、実はIHIとの合弁に移った後も、日本一の造船会社の今治造船と総合的な提携の話を進めていまして、関係各国の独禁法の認可を待っている状況です。非常に重要な部分に関しては、このCFOが造船会社の取締役として関わっています。

 持株会社の執行役員の1人は、JFEエンジニアリング事業の取締役を兼ねていますし、別の執行役員は商社事業の取締役を兼ねています。

 監査役についても同じ体制をとっていて、持株会社の社内監査役の1人は鉄鋼を兼務し、もう1人の社内監査役はエンジニアリング事業と商社事業を兼務しています。ファイナンスに加えて、役員の兼務体制で事業会社とのコミュニケーションを強化しています。単に取締役会に出るだけではなく、執行系の重要会議、例えば経営会議や執行役員会議にも出席します。監査役ももちろん経営会議等に出ていて、情報収集およびコミュニケーション、アドバイスすべきことがあったら適宜行っています。

 次に機関設計の人数ですが、2002年の設立当時、取締役は社内に6名、社外はいませんでした。監査役は、半数が社外である必要がありますから社内2名、社外2名の4名でスタートし、社外取締役を導入したのが2007年です。2007年に社内を1人減らして、社外を2名でトータル7名にしました。監査役は社内2名、社外2名は変わりませんでした。

 この後、規模を徹底して縮小した時期がありました。2014年当時、社内取締役が3名まで減ります。社外の2名は維持して、取締役会5人、監査役会は相変わらず4人ですが、私が2015年にホールディングスの社長になり、その前から鉄鋼会社の社長をやっていたので代表取締役でしたが、やはりこの規模は、われわれの事業規模からすると少なすぎるということで、鉄のトップに加えてエンジニアリングと商社の事業のトップも社内から取締役にして2名増やしました。さらに社外も1名増やして3名にして、現在8名の体制になっています。監査役も2017年、社外を1人増やして社内2名、社外3名の5名にしています。

 女性役員に関しては、取締役に1名、監査役に1名、取締役は社外です。監査役は社内から女性を登用しています。

 社外取締役を導入するのは比較的早かったのですが、大事なのは本当に独立性のある社外取締役か、社外監査役かということで、私どもは当社独自の独立性基準を作って一般よりは厳格な基準としていると考えています。例えば、当社および子会社の業務執行者等であった者は、もちろん独立性はない。それから、主要な取引先に該当する数値の基準を設けて、その基準に該当する法人出身者には独立性を認めない。そこのOBも駄目です。数値基準でも、主要な取引先で売上高の1%以上の取引がある企業に在籍していた人は、たとえその会社を辞めていても独立性は認めません。あと、コンサルタントや監査法人や、年間1000万円以上の支払いがあるところは駄目で、独立性には非常に厳しい基準を持っていると考えています。

 この結果、以前は私どもも監査役を中心にメガバンク出身の方がいらっしゃったのですが、銀行出身者は独立性のある役員にはなれないことになりました。メガバンクや、重要な顧客、重要なサプライヤーの出身者は独立性がないという認定をしているので、役員には選ばないこととしています。

 次に、スキルマトリクスを使って、社外の方の取締役、監査役のバックグラウンド、専門性について見ています。このことは昔から非常に気を遣っています。バックグラウンドは常にバランスをとっていかなければいけないと思い、社外の方だけではなく、取締役でいえば5名、監査役でいえば2名が社内にいるので、そういう人間のバックグラウンドも考えて、トータルとして取締役会、監査役会のスキル、バックグラウンドがバランスを持っていないといけないと考えています。中の人間も変わっていきますので、外部の人間も適宜、新陳代謝をしていただく。1人の社外取締役が長くやることがないように、ある種の基準をもって指名委員会等でも議論をしています。

 2015年にその指名委員会、報酬委員会を作り、今、指名委員会は取締役が社外2名、社内2人の4名、監査役は社外2名でこの6名でやっています。委員長は必ず社外役員から選定して、今、やっていただいています。具体的に言いますと、社長の選解任に関する基本方針で、特に気をつけなければいけないのは、委員会規程の解任に関してです。指名委員会または取締役会が「この人はどうかな」と疑問に思ったのに、本人が辞めないとなかなか日本の会社は交代できません。それに関して、私どもは本人がやると言っても指名委員会で辞めさせることができる内規を持っていて、具体的な手続き等も定めています。報酬委員会も同じように取締役が社内2名、社外2名の4名、監査役は社外のみ2名です。

 ここが恐らく今日の議論で一番大事なことだと私は思っていますが、どんなにいい形を作っても、その形で本当に効果が出ているか、実効性があるのかは、永遠の課題だと思います。ガバナンスの形としては先進企業なのに、なぜ不祥事が起きるのか。その都度、いつも「仏作って魂入れず」と言われてしまいます。やはり一番大事なのは、取締役会の実効性が上がっているかということです。これを徹底して検証することだと思います。

 2015年から、まず取締役、監査役にアンケートを実施して、改善すべき点を改善してきました。2年ほど前からは外部の評価機関も起用して、独立した立場から客観的な評価・分析を実施しています。もう一つ、その評価・分析がどうなのかを人に知らしめる必要があります。株主、投資家、その他多くのステークホルダーに、ガバナンスの重要課題について、社外役員だけの討議の場を作り、その議論の内容を2018年の統合報告書に開示しています。これが一番大事だと私は思っていますので、必要とあらば改定していく。改定がおかしいと思ったら、またさらに改める。ここをしっかりやらないことには、形をいかに作っても、本当に魂が入っていないということになるのではないでしょうか。

ガバナンス体制とガバナンス・コード
 当社グループのガバナンス体制とガバナンス・コードを簡単に振り返ってみますと、2006年に内部統制の構築をやり、2007年に社外役員を導入して、そのときに取締役の任期を全て2年から1年にするという定款変更をしました。個人的には、取締役の任期は本当に1年でいいのか、今でも若干、疑問は持っています。ただ定款を変更したので、後戻りはまず不可能です。「1年をまた2年にする」と言った途端に、恐らく株主総会で反対票が集まると思います。

 2015年のガバナンス・コードの制定で、ガバナンス基本方針を制定して、指名委員会、報酬委員会を作り、報告書を出してきました。2017年に実効性評価もやって役員を増やして、2018年には業績連動の株式報酬も導入しました。社長の選解任に関する基本方針の制定もやりました。

 次々と改定してきましたが、これは日本全体での一つの反省かもしれません。最初にコーポレートガバナンス・コードが導入されたときに、コンプライ・オア・エクスプレインで、多くの企業があまりにも従順にコンプライし過ぎたかなと。やはり、もう少しエクスプレインすべき事項があってしかるべきだったのではないだろうかと。問題が起きている会社を見ますと、エクスプレインするのが面倒だからもうコンプライしてしまえという、形から入ったことの反省があってもいいのではないかと感じます。われわれも女性役員を選任してないとか、中長期連動報酬についてもありましたが、女性の取締役も選任して、今や almost full compliance というところです。

 JFEのことをお話ししましたが、上場企業全体ではどうでしょうか。株式会社プロネッド[i]が、今年6月の株主総会をベースに「2020年社外取締役・社外監査役白書」を出しています。これは日本の企業の動向を非常に分かりやすく説明していると思います。機関設計で増えてきているのは、監査等委員会設置会社です。これは特に2016年から大幅に増えてきました。なぜかというと、社外役員が不足しているのを補うために、監査役には必ず社外の人が入っていますから、その監査役を監査委員の取締役にする手法で、社外役員の確保を図ってきた結果だと思います。ただ、7割近くがまだ監査役会設置会社としていて、指名委員会等の会社はあまり増加していない。私は、監査役会設置会社にはそれなりの意義があると思っていますので、傾向としては今の状況で安定すると思っています。

 取締役は、当社の場合は8名ですが8名が大体平均です。15名以上になったら、議論することすら難しいと思います。社外取締役の比率は、監査役会設置会社で今30%が社外取締役です。私どもの場合は37.5%ですから、監査等委員会設置会社にほぼ同じ数字になっています。社外取締役の比率は3分の1以上というところにJFEも位置していて、非常に代表的というか、代表的よりもう少し多い部類かと思います。

 任意の委員会設置会社は、報酬委員会で60%、指名委員会で56%です。機関設計は、ここで一段落しているのではないかと感じていて、来年のコーポレートガバナンス・コードの改定に向けて、さらに社外役員等々について、いろいろと今、議論されています。過半数にすべきだとか、取締役会議長は社外の人間が務めるべき等々ありますが、機関設計に関しては、次々と変化をさせていくよりは、ここで少しとどまって落ち着かせるべきではないか。まずはこれを普及することではないかと個人的には感じています。

その他のトピックス
 ROE経営は、私はある意味、資本コストを意識させた点で、効果は大きかったと思います。今、さらにROICやROESGとか、いろいろな指標を作ろうという動きがありますが、私は、これは少し too much だなと思います。あまり細かな分析手法等まで言うと、日本の企業はそれでなくともオーバーアナリシス、オーバープランニングに悩んだり、そういう病癖があるのに、さらにオーバーガバナンスという病気まで持ちかねない。これは注意すべきではないかと感じています。

 役員報酬に関しては、私どもは6対2対2です。基本報酬が6割、年次賞与が2割、株式報酬これは中長期の業績連動、こういう体系にしています。あくまでこの数字は目標を100%達成した場合です。ですから、目標を全然達成できないと、4割相当が全く無くなります。私が作るときに非常に悩んだのは、社外役員をどうしようかということです。JFEの場合は、今は社外取締役および社内外の監査役に関しては、業績連動を導入していません。なぜ悩んだかというと、私どもと一体感を持っていただくためには業績連動を入れるべきではないかと思いつつ、逆に一体感を社外の人や監査役に持たせて、本当にいいのかという議論もあって、持たせていません。

 政策保有株式いわゆる持合株ですが、昔は確かに意義があったと思いますが、これを正当化するのは難しい。持合いの目的は終わって、私が退任した後、JFEは「原則として上場株式を政策保有株式として保有しない」と今年のコーポレートガバナンス報告書に明記していますので、これで正しいと感じています。

 親子上場も極力減らしてきて、今は3社だけ残っていますが、常に上場会社の上場意義を検証しながら、必要であればそれなりの上場廃止等をやっていきたいと考えています。

 あと、議決権行使の助言機関がありますが、私は批判するつもりはありません。やはり大事なのは、助言機関ともきっちりと対話して、われわれの主張を理解してもらうべきです。助言会社が議案にペケをつけると言っても、その先の投資家個々人に理解していただく必要がある場合は、直接、会話していくことが大事だと考えています。

 最近、話題のESG・非財務情報の開示で、TCFDとか、気候温暖化関連でいろいろとありますが、やはり今は、ESGに関して評価機関が乱立していて、これが本当に統一できるかどうかは分からないのですが、ある程度、統一的な基準、評価の仕組みを作っていく必要があると考えています。

 最後にステークホルダー主義ですが、われわれは昔からステークホルダー主義できたつもりです。2018年1月にブラックロック[ii]のCEOラリー・フィンクさんから私に手紙が来ました。さらに昨年8月にアメリカのビジネス・ラウンドテーブルでステークホルダー主義が言われるようになったのですが、日本の多くの経営者にとっては当たり前のことで、従来からそのようにやってきたのです。これは、売り手よし、買い手よし、世間よし、の「近江商人の三方よし」で経営してきてますので、ステークホルダー主義は当然だと思います。

 これに関して、ハーバードのレベッカ・ヘンダーソン先生が『資本主義の再構築』という本を書かれています。私はこの本の内容を完全に咀嚼しているわけではありませんが、企業の目的、存在意義、組織の目的は、企業理念で社会を結びつけていく、ステークホルダーと結びつけていくのが非常に大事だと考えています。

 突き詰めると、今、国連で提起されているSDGsを経営に取り込んでいくことは非常に大事なことだと思いますし、特に最近は、若い社員一人ひとりが自分の仕事とSDGsのゴールを関連づけることによって、仕事のやりがい、生きがいを感じられるようになってきています。これからは、企業はステークホルダー主義であり、SDGsを中核に据えて経営に当たっていかなければいけないと考えています。


[i] 株式会社プロネッド:コーポレートガバナンスおよびエグゼクティブ・サーチのコンサルティング会社

[ii] ブラックロック:世界最高の資産運用会社

 

講演2「二つのコードの設定と課題」

川北 英隆氏
(京都大学大学院経営管理研究部 特任教授/京都大学 名誉教授)

 今日は、二つのコードに関してお話しをして、コードに対する考え方、現状、コロナ禍でどのような変革を図るべきなのかについてお伝えできればと思います。

 私は、政策保有的な保有が少なかったころの日本生命で証券アナリストをやっていたこともあり、投資家経験があるということから、大学での講義も研究も証券投資にしています。現在の研究テーマは、東証さんと一緒に新しい株式のインデックスを作ることです。金融庁でのコーポレートガバナンス・コードの3年ごとの改定の議論にも参画しています。そこでの発言も含めてお話しできればと思います。

二つのコードの設定と改定
 2014年と2015年にスチュワードシップ・コード、コーポレートガバナンス・コードが相次いで制定されました。その後、3年を目安に改定が続いていて、今年10月からコーポレートガバナンス・コードの改定の議論が開始されています。現在2回の会合が開かれ、来月も2回くらい開かれるのではないかと思います。

 このコードができた背景ですが、実際に議論が始まったのが2013年で、日本の経済が低迷し、株価も安値でした。2012年、東証株価指数はバブル崩壊以降の最安値を付けています。その中で安倍政権が誕生して、日本の経済と株価を何とかしようということが、コードの議論の発端だろうと私は理解しています。

 具体的には、企業のガバナンスのレベルアップを図り、それによってその成長と収益力を高めるとの意図があった。一方でプロの投資家といわれている人たちが、プロの責務なり、意識なりが本当にあるのか、能力も足りないのではないかという議論があり、機関投資家に対する叱咤の意図もあったのだろうと思います。企業とプロの投資家のレベルを高めることによって、最終的には個人の利益に資することができるだろう、それによって日本の経済が良循環に入るのではないかといった意識がありました。

コードの力点
 では、現状はどういうことが要請されているかというと、経営トップの選任プロセス、社外取締役、委員会、監査などの組織の設計があって、さらに株主の利益に資するために資本コストを意識し、利益を上げるような体制を作っていくといった視点があります。また株主の政策保有や親子上場への問題意識、企業と機関投資家(プロの投資家)とが対話によってお互いに切磋琢磨して、企業の評価をより高め、株価を上げていくことが意識されてきたと思います。加えて今回のガバナンス・コードで一つのテーマになるのが株主総会です。特に今年はコロナの問題があって、6月末に集中している株主総会がどうなるのかという懸念も起きたのですが、それを踏まえて総会のデジタル化を図っていくべきではないか、ということも議論の遡上に上がっています。

 経営の体制に関しては、特にCEO選任のプロセスをしっかりとやっていってほしいと要請されているし、実際にもコーポレートガバナンスの議論の中で、選任プロセスが非常に重要だと言われる方がおられます。要するに、お友達はあまりいないと思うのですが、自分の部下としてかわいがっている者を引き上げていくのはおかしいのではないかということで、任意であれ指名委員会が必須な組織であれ、その役割を重視し、きちんとした能力のある経営者、役員を選んでいくことが重要だと議論されているし、今回さらにこの点の強化が図られるのではと思います。

企業の多様性
 もう一点は、特に役員の構成に関して、林田特別顧問に示していただきましたが、多様な能力を持った人を取締役や監査役として選任をしていく必要があるのではないかと言われています。特に社外取締役をいろいろな観点で選ぶことによって、異文化が入ってきます。異文化が入ることによって、その企業の実質的な発展が促されるのではないかということです。さらに、女性とか外国人を含めたダイバーシティの問題も議論されています。

 企業がどのようなスキルを自分たちの経営に必要としているのかを、スキルマトリクスで示していただいて、かつ、それが十分に満たされているのかどうかによって企業の役員構成の質を、外部がきちんと見られるようにしたいという議論がされています。

 残念ながら前回までの改定の議論では、社外取締役の数について、単に3分の1以上とか、半分以上とかいう議論が多く、形式的な基準に陥っていました。極端に言えば、数さえそろえれば何でもいいという一面があったと思います。しかし今回は多少雰囲気が違っており、数よりも実質を追求する必要性が議論されていますし、私も質が重要だと思っています。

 先のフォローアップ委員会では、社外取締役が3分の1以上というのは多くの上場企業がクリアしつつあるので、それはいいとして、それ以上の定め、例えば半分以上にするとか、何人以上とか、そういう数の議論はとりあえずはやめた方がいいという趣旨のことを私も発言をしました。

多様なステークホルダー
 ステークホルダーに関しては、一つは投資家(株主)であり、もう一つは従業員の議論だと私は思います。投資家に関しては、資本コストの問題は当然の議論だし、また企業とプロの投資家とがきちんと対話をして、その上で企業と投資家の相互の間でレベルアップを図っていこうとする議論も当然だと思っています。

 片方で従業員の重要性が、最近、特にアメリカで議論されていることを受け、日本でもそういう論調で話される方が増えています。これも当たり前のことです。従業員もしくは社会を無視して企業が経営をやっていくことは、一時的にはもうかるかもしれないけれど、長期的には続かない話です。全てのステークホルダーに目配せしつつ経営をやっていくことは、当然の議論だと思います。

 ただ、気になるのは従業員の重視といったときに、資本コスト未満の経営をやっている企業の言い訳にならないのかどうか。もしくは経営努力をしていない言い訳になっていないのかどうか。そこは注視をする必要性があると思います。

 日本の賃金の水準を見てみますと、最近、韓国や台湾に追いつかれつつあるのが実態です。表は、世界の賃金に関して、1人当たりGNI、国民総所得を2000年から見たものと、製造業の1時間当たりの賃金を2010年と2016年で比較したものです。日本はほとんど成長していないのに対して韓国や台湾が成長してきています。

 

 図は、資本金10億円以上の、金融を除いた企業全体で生み出した付加価値、これはニアリーイコールGDPですが、そのうち何%を賃金、言い換えれば人件費として分配しているのかという労働分配率を示しています。この労働分配率は1995年あたりをピークに傾向として低下してきています。GNI(国民総所得)が増えない中で労働分配率を下げたことにより、1人当たりの賃金が増えてない結果をもたらしました。

 

 先進国はもちろん、発展途上国にも追いつかれつつある日本の賃金ですが、これは何をもたらすのか。賃金が伸びないので、どうしても消費に回すお金が不足する。消費が伸びないので、国内の企業の付加価値生産が停滞する。付加価値生産が停滞するから、さらに賃金を抑制する。賃金の抑制がもう一度、消費のところに跳ね返ってきて消費が伸びない。日本は1990年代のバブル崩壊以降、こういう悪循環に陥っているのではないかという懸念を持っています。

 従業員重視は当然の話なので、では人件費を上げるためにどうすればいいかというと、結局は企業自身の利潤をはじめとする付加価値生産額を上げていく必要性があります。「企業の利潤などを上げろ」と言うと、「結局、株主のためではないのか」と言われがちですが、そうではなくて上げた付加価値のうちの何割かは従業員に配分して、投資家も従業員もハッピーな状況を作り上げていく。これが今の日本に要請されています。そういう観点から、株主だけではなくて従業員も重要だと言われれば、それは当然だと思います。

 一方で、上場企業の半数が、この10年とか15年を平均するとPBR(株価純資産倍率)が1倍を割れていることは、非常に大きな問題だと思います。結論だけを述べると、資本コスト未満の経営を行うとPBRが1倍を割れてしまいます。もちろん、PBR 1倍割れは資本コストの問題だけではなくて、経済の環境、業界を取り巻く環境、いろいろなものが影響します。ここ10年とか15年を平均して半数の企業がPBR 1倍割れというのは、そういう短期的な要因ではなくて、もう少し長期的に見て、資本コスト未満の経営をやっている企業が多いことが背景にある。そこに大きなポイントがあると思います。

 PBRはROEとも関連する話です。株式の資本コストという意味ではROEが対応しますが、ROE至上主義、それが一番重要だという議論には、私は与していません。そうはいっても資本コストを片目でにらみつつ経営をやってもらうことが、株主も従業員もハッピーになる一つの基盤ではないかと思います。

支配株主と被支配企業
 「週刊金融財政事情」の2020年11月23日発売号に、親子上場、もう少し広げて言うと支配株主と非支配株主の関係に関して、企業も努力すると同時にマーケットを運営している東京証券取引所も努力すべきではないのかという趣旨の寄稿をしています。私が一番気になっているのは、昨年も今年もそうですが、40%台の株式を保有することで、支配権を維持している、もしくはその獲得が行われていることです。40%で支配できるということは、株主総会で議決権行使をする株主の割合が100%ではないので、その行使しない株主の割合を加味すると、40%台の株式を持っていれば実質的に企業の半数以上の株式を保有していることと同じことが生じてくる。それを逆手に取って、例えば40%台を目標とするTOBが行われているのです。これは少数株主の権利の阻害であると思いますし、どうせ子会社にするのであれば、100%を目指すのが本筋だと思っています。40%でも50%でもいいのですが、その保有比率をずっと維持することが何を意味するのかと言うと、その非支配企業の経営が良くなってくれば、例えば100%子会社にするとか、配当でたくさん吸い上げるとか、逆に経営が悪くなると全部売ってしまうとか、そういう選択権を支配株主が持っていることになる。そういう選択権を持っていることは支配株主の非常に大きなメリットです。逆に言うと少数株主の方は、そういう選択権を支配株主に渡すことによって、大きな損失を被っているのです。あくまでも私見ですが、市場の規律を守るためにも、東京証券取引所として何らかの行動を起こすべきだということを書きました。

 実は今回のコーポレートガバナンス・コードの議論と並行して、今、東京証券取引所は市場の構造改革を行い、東証一部市場を海外の投資家にも通用するような企業の集まりに改編し、名前もプライム市場に変更しようとしています。そのプライム市場において、支配株主と非支配株主のような親子上場の形態で、かなりの数の上場企業が上場している、もしくはいつでも40%ぐらいのTOBを掛ければプライム市場の企業を子会社化できる状態とは何か。非常に変だというのが、寄稿の主張の一つなのですが、幸いにもコードの議論でもプライム市場のガバナンス構造がとり上げられます。いずれにせよ親子上場の問題、もしくは支配株主と非支配株主の関係を整理する必要性があるというのが、私のもう一つの意見です。

 支配の形態には、親子上場以外にもいろいろな形態があります。支配株主となった経緯も、創業、出資、第三者割当、TOBなど、いろいろな形態があります。それから、支配力に関しては、会社法を考えると実質的に議決権の行使をしない株主を考慮して、3分の2以上とか、2分の1以上とか、3分の1以上とかの保有形態があります。

 それに対する対応はいろいろあることを述べていて、一番手っ取り早いのは上場規則で何らかの規制をすることです。もしくは、もう一つの方法として、市場の構造を改革すると同時に今ある東証株価指数も改編することです。今の東証株価指数は、東証第一部上場企業イコール東証株価指数(TOPIX)の構成企業ですが、今後は1対1対応にはならない方向が示されている。そうすると、被支配企業がプライム市場の上場企業であっても、新しい東証株価指数に入らないようにするなど、いろいろな方法が考えられます。

機関投資家のスタンス
 次に、投資家の問題です。機関投資家(プロの投資家)自身は、委託者、つまり本来の投資家のために投資行動をしていないのではないかという議論がありますし、プロとしての能力がないのではという議論もあります。また、投資家と投資先企業との対話ですが、極論すると、ゴルフ談議がかなりの部分を占めているのではないか、きちんと議決権行使をしていないのではないかなど、今までのプロの投資家としての行動を改めなければいけないのではないかということが議論されています。本来の投資家のためにプロとしての投資能力でもって、時には投資先の企業ときちんと議論を交わして、あるときには株主総会で会社提案に対して「反対」の議決権行使をするという強い姿勢で臨むべきではないか。それが回り回ることで、本来の投資家に対してプロの投資家としての役割を果たすことになるという議論、そういうことだろうと思います。

 プロの投資家ですが、どういう組織があるかというと、アセットマネジメント会社と、年金ファンドなどのアセットオーナーと呼ばれている投資家がいます。そういう人たちが、昔は責任感がなかったのではないか。アセットマネジメント会社は大手の金融機関の系列なので、その親会社のために、例えば手数料稼ぎのために短期的な売買をやるなどして委託者を見ていなかった。そこで、その責任感と投資能力が議論されているということです。この点は、公的年金や企業年金など、年金ファンドを管理しているアセットオーナーに対しても、同じような議論がされています。もちろん、アセットオーナー自身が短期的な売買をやることはあまりないのですが、きちんとした能力を発揮し、年金資産を安全、かつ有利に運用しているのかどうかという議論です。

 そういう中でスチュワードシップ・コードができて、その受け入れ表明をしていることとか、企業と真剣に議論をしていることとか、議決権行使の判断基準を公表し、実際に議決権を行使し、その結果を公表することが要請されています。さらに言うと、投資パフォーマンスも公表しなければならない。これは投資信託がその代表例です。年金ファンドの運用を任されているのであれば、対アセットオーナーに対して、委託を受けた年金ファンドの投資パフォーマンスの公表も要請されています。

 これに関して、コードは議決権行使での結果の公表を重視していますが、これはまだ形式論にとどまっているのではないかと思います。例えば株主総会での会社の提案に対して、反対の意見表明をした場合に、かつ、そういうことが何回も起こった場合に、本来はその企業の株式の保有を続けるのがいいのかどうかも議論しなければいけません。株価指数をベンチマークとするインデックス運用を行うと、そのインデックス(株価指数)の中に自分たちが議決権行使で反対した企業がどうしても入ってくる。そこで通常、インデックスに入っているから持たざるを得ないという議論がされますが、それは本末転倒で、そういう企業がインデックスの中に入るのを排除するような行動や意見表明をしてもいいのではないかと思います。

コード:必要十分なのか?
 それで今の二つのコードなのですが、先ほど社外役員の人数の事例をあげましたが、コード自身は結構形式論が多いです。それでいいのかどうか、むしろ質の問題を議論すべきだと思いますし、今回のコーポレートガバナンス・コードでは質の議論がかなり重きを占めると思います。

 それから、コードを受け入れる側の企業やプロの投資家ですが、エクスプレインすることに対しての抵抗感が強過ぎるのではないのかと思います。その結果として、形式的にコンプライしている企業が結構あるのではないか。特にコンプライの率は、日本は非常に高いので、変ではないかと思います。エクスプレインすることは悪いことではありません。自分たちが独自性の高い行動をしているのであれば、当然、コンプライできないことが出てくるはずです。コンプライできないのであれば、きちんとエクスプレインして説明すべきだと思います。

 また企業側のコンプライに対する投資家側の評価と行動は、まだまだ貧弱だと思います。企業に対して、コンプライできないもしくはできていない状況にあるのであれば、「ちゃんとエクスプレインすべきだ」もしくは「企業としての個性を出すべきだ」というアドバイスをすべきではないかと思います。

 形式論で良しとするのではなく、親子上場などの場合がその典型ですが、形式論を超えた努力によって上場企業の質やマーケットとしての質を高めていく。そういうことも行政側、市場側として努力すべきではないかと思います。

 もう一点、前回のフォローアップ会議での議論でも指摘があったのですが、多様なステークホルダーに関しては、コードの序文に書かれています。でも、その具体性が今のコードに不足しているのも確かです。

 ESGやSDGsに関しても、非常に重要な問題だと思います。これも今のコードの中にそんなに多く書かれていないので、もう少し書かれていいのではないかと思います。ただし、多様なステークホルダーとか、ESGとかに議論を集中していくと、逆に議論が散漫になってしまうのではないかという懸念もあります。また環境の問題に関して言うと、日本ではコードを表面的に受け入れる企業が結構多いのではないかと思っています。

コロナ禍における変革
 ESGに関して今、思っていることを少し述べると、特にコロナの問題によってEとSの問題がかなりクローズアップされているのではないかと思っています。インターネットによってかなりの業務が行われており、業務の手順や方法を変える必要性が高まっていると思います。通勤電車が典型ですが、人が電車に乗って物理的に動き、会社という一つの物理的な入れ物の中に集まって仕事をするのが今までの仕組みでした。でも、考えてみるとむしろ情報を集めることの方が重要だろうと考えられます。証券取引所がその典型です。従前の証券取引所では、兜町や北浜の一つの建物の中に証券会社の人が集まって、そこで情報交換して、売りと買いをマッチングさせて注文を成立させていました。それが今はコンピュータの中に売りと買いの注文情報を入れて、マッチングをさせて売買を成立させる形にしています。結局、従前の証券取引所は人が動くことで成り立っていましたが、現状は情報を動かすことで成り立っているわけです。そういう方向にこれからの企業の活動も変えていく必要性があるのではないかと思います。もちろん全てそうなるとは思いませんが、できるところからしていくのがいいのではないかと思います。

 特に、東京では往復3時間くらいの電車通勤はざらです。それが本当にソーシャルなのか、社会性のある制度や仕組みなのか、ここは考えなければいけません。電車に乗らなくていいということは、鉄道会社にとっては大変な問題ですが、社会全体として見れば環境にやさしいわけです。住宅事情とか子育ての環境とかも考えると、企業として情報を動かすことで仕事を完結させられるようにする、本社ではなくサテライトオフィスを多用する、そういう体制を組むことが社会にとって有意義になると思います。オンライン診療もオンライン教育も同じことです。病院や学校を地方に分散させることが望ましく、それが結局、親と子の時間を増やし、少子化対策にも地方の活性化にもつながるはずです。

 地方の活性化に関する一つの好事例が京都企業です。京都の製造業で東証第一部に上場している企業30社を見ると、投資パフォーマンスはそれ以外の東証第一部の製造業より高いですし、売上高当たりの営業利益率が高いと言えます。背景としてあるのは、独自性のある技術を追求してきている、過当競争を避けて高い利益率を得てきている。それから東京をパスして海外を目指している。日本の人口減少、高齢化社会では、これが正解だったわけです。加えて、技術のクラスターを形成している。京都企業同士は、そんなに大きな競合をしていないので、逆に情報を交換することで団結して生き残ってきたということです。以上のようにいい経営環境を作ってきた京都企業は、地方に展開することの一つの好事例だと思います。

 ただ、残念ながら、世界を代表する消費者向けの商品を作っている京都企業は少ないです。京都企業がさらに消費者向けの製品を作ることになれば、もしくはそういう企業が京都以外のところで生まれてくれば、日本として非常にハッピーな状況になると思います。

 多様性、独自性が必要で、コードでいうとエクスプレインすることが重要なのではないかと思います。投資家自身がハッピーになり、かつ従業員がハッピーになるためには、企業が高い収益性を持ち、革新性をもって事業をやっていく。さらにそういう収益性と革新性をサスティナブルに続けていくことが重要だし、そういう企業を投資家が正しく評価する。そのためには、きちんと対話をして、かつ最終的に、選別していかなければいけないのではないかと思います。その選別ツールとしての制度も淘汰を促す、そういうことがあってもいいのではないかと思います。

 

パネルディスカッション

<パネリスト> 林田英治氏、川北英隆氏
<司   会> 鈴木一水

二つのコードの実効性

鈴木 最初に、ご講演いただきました内容のおさらいを兼ねて、林田特別顧問のご講演に対する川北先生のご感想、そして川北先生のご講演に対する林田特別顧問のご感想を、それぞれ二つのコードの実効性評価という観点からお話しいただきたいと思います。

川北 大企業の観点から、体制の構築やコードの評価に関してお話しいただき大変参考になりました。ガバナンス・コードについて、JFEさんにとってあまり必要がないところもあるとおっしゃったと思います。特に事業ポートフォリオに関してだと思うのですが、ある意味コードはお節介だと思います。何でここまで政府が口だしをするのだと、最初にこのコードができたときに、私も思ったところです。

 ただ、上場企業でありながら、コードが示していることについて議論をしていない、もしくはできていない企業があるのも確かなので、そういう企業に対する指針だと位置づければいいのではないかと思います。それと同時に、エクスプレインに関しては、まさにそのとおりで、コンプライするだけが企業ではないということも確かです。

 持株会社としての役割を絞り込んでいって、特定の部分に特化されていく一つの事例として、事業ポートフォリオの構築と見直しをお話しいただいたと思います。こういうふうにして企業の内部で議論されているのだということで、頭が整理できました。

 もう一つは、機関設計の部分です。組織の構築、特に役員の構成に変遷があって、その時々の考え方でレベルアップされていくところも、企業としての議論がよく分かりました。これは、私が社外取締役をやっている企業での議論ともオーバーラップしました。同じようなプロセスを経つつ、企業がきちんと対応されてきていると思いました。

 事業ポートフォリオに関しては、ポートフォリオの評価を行い、必要であれば再編を含めた改善を実施する。そして事業ポートフォリオの裏付けとしてファイナンスやガバナンスの確立と組み合わせていく。それを投資家に情報提供していくというプロセスの重要性と、これが一つの経営の方法であることもよく分かりました。

 組織に関して言うと、その構成に関しては、特にどういう能力を持った人が必要なのかというのは、企業それぞれの必要性に応じて工夫する必要があります。JFEさんでは、大企業としてグローバルに展開されている中で工夫をされていることが分かりました。役員会において、今の構成であれば、客観的かつ多様な見方に基づく意見が出てきて、その意見に基づいて経営が正しい方向を向くベースができあがっていることも理解できました。かつ、実効性や全体の構成の評価と、役員会での議論を評価することで、実際の経営もしくは組織へのフィードバックをされていることも重要な点だと思います。

 私の意見を付け加えますと、投資家としては、投資家と独立した社外取締役との間の議論がほしいと思います。自分たちの役員会ではこういう議論がされているのだ、こういう方式で意思決定をしてるのだというところも、投資家との議論の対象にしていただけるといいのではないかと思います。今回のコードの改定でも、社外取締役と投資家との間の議論が一つのテーマになっています。後で、実際にこんな形でやっているということがありましたら、教えていただければと思います。

 社外取締役の数の議論もありました。この点は質の問題と組み合わせていかないと、単に頭数をそろえただけでは役に立たないということです。この点、JFEさんとして社外取締役の質が重要だというところを、もう少しお教えいただけるとうれしく思います。

 それからROE至上主義の議論をされていました。ROEは一つの指標であって、それが全てではありません。そうはいっても、いろいろな指標を出してくると、企業経営の中ではこんがらがってきます。オーバーな指標の管理、ガバナンスになるということも確かです。そこは、あれを見ろ、これを見ろというのではなくて、この二つ、三つさえきちんと押さえていれば、ある程度経営の効率性は評価できるのだと、私が加わっているフォローアップ会議でも議論ができればと思った次第です。

林田 私のコメントの前に、今いくつか問題提起いただいた中で、私の一つまだできていない部分をあげると、投資家と社外取締役のダイレクトのコミュニケーションです。実際は、何をしているかというと、社外役員の方々がいろいろディスカッションした内容を、統合報告書にそのまま載せて、こういうふうにやっていますから実効性はあると思っていますという、どちらかというとワンウェイのコミュニケーションになっているので、今後はこういう要求が出てくるだろうと思いますし、われわれもそれなりの対応を考えていかなくてはいけないと思います。

 あとは社外取締役に関して言うと質です。スキルマトリックス、バックグラウンドマトリックスに示したように、「私どもが欲しいのは、今こういう人なのです」というのに合わなかったときには、逆に選ばない方がいいのではないかと思います。なぜかというと、今そういう候補がいないから、代わりに他の人を選んでしまうと、その人に特に瑕疵がない限り、現実問題として何年かやっていただかないといけません。そうすると、われわれが必要とする資源を補充するには、またさらに人を増やすことになってくるので、どちらかというと数の議論は形式的にある程度はいかなくてはいけないと思います。3分の1以上だったら、あとは質が非常に重要だと思いました。

鈴木 林田特別顧問から川北先生のご講演に対するコメントをいただきたいと思います。

林田 特に異論があるところはないですが、コードの力点として述べられていることは、全くそのとおりだと思います。数の話は、半数以上というのを推奨されても、今3分の1いっていない会社はもっと増やすべきだと思うけれども、ある程度いっている会社に半数以上をさらに要請するというのは、説得力が乏しいという先生のお考えに全く賛成であります。

 大事なのは労働分配率です。私は労働分配率そのものよりも、先生のおっしゃる企業の付加価値生産力が非常に重要だと思います。結局ROEの重要性を認識したときに、ROEというのは基本的に利益率と資産効率とレバレッジのかけ算ですので、日本の企業が一番劣っているのは利益率だと思います。特に先生が言われたように、PBRが1をしばらくの間割れている企業であります。国際競争の中で、単にコモディティだからといって、コストだけで勝っていこうとすると、日本の製造業は先行きが暗いのは目に見えているのです。やはり、付加価値をいかに上げるか。高くても買っていただけるものを、どうやって作っていくかというところに注力しなければいけません。

 ROE経営の功罪ですが、一部に見られるのは、今の金融市場の状況からROEを上げるのに手っ取り早いのはレバレッジを利かすことだといって、あたかも自社株買いが企業としてやるべきことの一番最初にあるのだという風潮はいかがなものかと思います。やはり日本企業のROEの低さは、資産効率はだいぶ良くなってきていると思いますが、一重に利益率の劣化だと感じています。

 最後におっしゃった京都企業の良さは、利益率が高いことです。皆さん他の会社のやっていない分野に特化するとか、極めてユニークなものに特化する。さらには、ノーベル賞を輩出するような企業もあるわけですから、非常に地味だけれども先端的なところに取り組んでいく。その先端的なものにお金をつぎ込んで取り組んで、その結果をハイリターンで回収している。しかるべくお金を使って、しかるべくもうけるという、ここの差かなと感じました。これは特に日本の製造業としては、今までもそうしてきたつもりですけれども、これからますますそちらにシフトしていかなくてはいけないと思います。

 最後、もう一点は、ESG、SDGsについてですが、非財務情報の開示というのは非常に重要だとは思うのですが、ただ、これは非常に難しいです。本当にいろいろな産業を横断的に開示方法、評価方法を統一できるのかという、根本的な問いが一つあるのと、やはりあまり対象を拡大してしまうと、議論が拡散してしまいます。ここは、経営としてというよりも、社会として非常に気をつけなければいけないのではないかと思います。あるときには、言い訳に使われかねないと。なんとなく企業間の意識格差が結構大きいと、普段話をしていても感じています。私の方からは以上でございます。

川北 ESGに関して、私が述べていたことをきちんとまとめていただいて感謝します。ROEについてはレバレッジを変えることで、高めることは可能です。でもそれは本質ではなくて、京都企業を見ていると、自己資本比率が非常に高くて現預金をたくさん持ってレバレッジが低いのです。金融庁がそれは変だと言っているのですが、京都企業としては、例えばリーマンショックのときに資金繰りに大変困りました。当時銀行があまりいい顔しなかったこともあるし、もともとベンチャー的な企業が多いので、お金に困った経験が企業文化としてあります。だから現金をたくさん持っているのだと、堂々と言われる経営者もおられます。それはともかく、レバレッジが低いことは大きな問題ではなくて、付加価値率を高めることによって、結果としてROEが上がるプロセスが必要だと思います。

 ESGに関して言うと、個々の企業において頑張れる分野が当然あるわけです。例えば、化学メーカーであれば非常に早く自然にかえっていくプラスチックを開発するとか。先ほど排水処理のお話もありましたが、アフリカ大陸を流れる世界第二の流域面積を誇るコンゴ川は、人口が爆発している地域を流れているため、川が巨大な下水路になっています。そういう問題をどうするのか。それから、きれいな水をどうやって手に入れるのかという水道の問題があります。企業さんごとに役立つ分野、自分たちの対象とすべき分野は当然変わってくるはずです。そこを見極めて、事業活動をやっていく必要性があって、単にみんなやっているからやるというものではないと思います。

 ESGについては分析したことがあるのですが、短期的なもうけにつながるものではないのです。そこはちゃんと理解してやっていく必要性があるということで、ESGに関しても、いろいろな課題があると思います。

資本コストに基づく企業と投資家の対話

鈴木 ありがとうございました。ESG投資は最後にとりあげようと思います。

 お二方ともROE至上主義は否定されたうえで、でも資本コストを意識した経営はとても重要であり、ROE重視をコーポレートガバナンス・コードが掲げたことが、資本コストを意識した経営に目を向けさせる契機になったということで、意見は一致されていると思います。

 ここでお伺いしたいのは、コーポレートガバナンス・コードでは投資家との対話、スチュワードシップ・コードでは企業との対話と、対話が非常に強調されています。資本コストを踏まえた上で、例えば研究開発とか事業再編とか設備投資に対して、具体的にどのような対話が企業と投資家との間で現実に交わされているのでしょうか。あるいはもっとこういうことを対話で意見交換するべきである、これが不足しているという点もありましたら、ご指摘いただきたいです。

林田 投資家との対話で、私自身がやっていたのは1年半ぐらい前までなので、これほど経済が悲惨なときではなかったです。今でしたらやはり事業ポートフォリオの話で、鉄鋼業がコアビジネスのJFEに対して、コロナの影響もあって、生産が非常に低迷して業績が悪い。昨年3月の決算では、やはり設備の大幅な休止も減損も計上した。こういったときに、何でこんなときに鉄鋼事業にまだお金を使うのかという話は、出てくると思います。

 ただ、私どもとしては、やはり事業のコアであって、過去の収益を見ても相対的によそよりも高い利益率を上げてきた。今後も投資家に、具体的にこういう手段を使って投資をこれだけして、キャッシュフローもこれだけ生み出してという、結構細かくて具体的な数字に及んだ説明をしていかないといけません。やはり投資家は短期の収益、キャッシュフローを重視しますので、私は企業が非常に難しい状況に直面すればするほど、投資家との直接的な対話は重要になってくると思います。それにかなりの時間を費やしているのは事実であります。これから特に日本の製造業は、今まで以上に時間と人をその分野につぎ込んで、定量的に説明していく必要があると思います。

鈴木 それは具体的には事業別のROIC、あるいはその構成要素について細かくデータをあげて説明していくということですか。

林田 そうですね。やはり事業ごとの収益率ですね。具体的にはROICが一番分かりやすいと思います。

鈴木 ありがとうございます。この点につきまして、川北先生、こういう対話が必要であるというご意見はございますか。

川北 こういう対話が必要だというのは、私が実際に投資や対話をやっているわけではないので、人から聞いて思ったことを申し上げます。一つは、投資家自身が長期投資の視点に立って、A社の事業のこの分野の資本コストと現在の利益率の関係についての分析し、その一応の結果を企業に持っていく。それに対して企業側は、これは違うとか、それは大体そうだよねということで、議論を深める。かつ、そういう議論の中で、投資家は企業の「じゃあ、この事業を今後どうするのだ」ということを言っていく。それが非常に重要だと思っています。企業として、この事業の利益率がこのぐらいで、資本コストはこのぐらいと大体見積もっていることも重要ですが、さらに議論を深めるためには、投資家側も一定の見解を持ち、試算して、それを材料にお互いに議論を戦わせて、気づきを含め、徐々にすりあわせていくプロセスが必要なのかなと思います。

 これはある経営者の方から聞いたのですが、ずっと赤字の事業があり、会計的に赤字が出ていたので、当然資本コスト割れです。でもその経営者は、この事業は必ず伸びる。だから赤字だけれども、続けていく。そういう強い意志が必要だとおっしゃっていました。今、その事業は花開いています。資本コスト割れなので、この事業をやめたらいいというような、そんな単純なものではないはずです。いずれ花開くという、経営者側の見立てと、それに対する自信も非常に重要なのかなと思います。そういう事業があるのなら、それはきちんと投資家と話し合いをし、企業側の決意や意志を見せてもらえれば、非常にありがたいと思っています。

機関設計

鈴木 どうもありがとうございました。次に会社の機関設計について議論します。林田特別顧問からもご紹介がありましたように、現在日本の上場会社では、監査等委員会設置会社への移行が進んでおります。監査役会設置会社、監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社、この三つの統治形態が併存していることが、日本の大きな特徴であろうと思います。この三つの形態のメリット、デメリット、そしてどれか一つを選ぶ場合に考慮すべき事項として、どういうものがあるとお考えでしょうか。

林田 非常に難しい質問です。私自身はやはり、取締役会と独立した監査役の存在というのは、非常に大事だと信じています。ですから、四半期ごとに社外監査役を含めまして、監査役とCEOは経営の足元の問題等に関してディスカッションしています。それには、他の取締役は入っていません。違う視点の意見をいろいろ言ってくれる。また、あるときは監査役としてではなくて、自分の経験として、それぞれの分野でのことを言ってくれることもあります。監査役として独立していざというときには、取締役会と対峙する覚悟を持った人がいてくれるという安心感が私にはあります。実際には、監査等委員会設置会社が非常に増えているのですが、本当にそこで今のように期待していることをできるのかということがあります。

 一方、指名委員会等設置会社も当然のことながら選択肢の一つなのですが、これをやって今よりよくなることは何かということが、まだ自分ではよく理解できていません。今で言うと、いわゆるハイブリッドです。監査役にも取締役と同じようなある意味の資質を備えてもらって、経営に意見を言ってもらう。このハイブリッドというのが自分としては良くて、もうしばらくはこれが主流になっていくのではないだろうかと思います。

 余談かもしれないですが、監査役というと、これは失礼な言い方かもしれないですが、大体使命を終えて、執行系が終わって最後に監査役をやって退任される、日本の会社では何となく「あがり」の仕事と思われているように思います。私どもはそうではなくて、役員になる年齢で一番若い年代がいきなり監査役になっています。社内はほとんどそうです。

 なぜそうしているかというと、監査役は一番勉強できるというか、経営にアクセスできるのです。社内のどんな会議でもどんな資料でも要求できるわけですから、執行系にいるよりもそういうことはやりやすいわけです。私は機関設計として、監査役会は社内の昇進のプロセス等も絡めることもできて、非常に使い勝手がいいと感じています。

鈴木 それでしたら1回監査役になられた方が、執行に戻るということもありますか。

林田 それはもうたくさんあります。昨年も持株会社の監査役をやった人間が、その下の事業会社の商社で代表取締役副社長に就くという人事がありましたし、今後もそういう人事が出てくると思います。

鈴木 JFEホールディングスの採用しているハイブリッド型監査役会には、監査等委員会と同じような特徴があると思ったのですが、今のお話でしたら、監査等委員会では不十分だということでした。監査役も取締役と同じように、できるだけ執行側に近づいて意見を述べることが、監査等委員会とどう違うのでしょうか。

林田 まず監査役の方が、じっくりと仕事に取り組めます。なぜかというと、4年間の任期がある意味保証されています。監査役というのは、ものごとの本質を追求する時間も与えられていますので、監査等委員の取締役は通常2年で皆さん運用されていますけれども、それよりは独立性が維持されていいのではないかと思います。

 監査等委員会設置会社の監査委員をやっている取締役の方と、他の取締役の方の違いは何なのかと、逆にあいまいでよく分からないです。その点、監査役会設置会社の方がはっきりしているのではないかと思います。

鈴木 よくわかりました。川北先生、機関設計につきまして、何かご意見はございますか。

川北 証券会社の社外取締役をやっていたときの経験から言うと、監査役もしくは監査を担当している取締役も含めて、監査組織の独立性と、独立した組織であるがゆえに調査体制とかレポーティングの流れなども独立したものを持つべきだと思います。それによって、執行側に対していろいろな意見を言えますし、不祥事があったときには、それにきちんと対応できるのではないかと思います。

 それと、林田特別顧問と同じ意見ですが、監査役ないしは監査組織の人間もそうですが、やはり優秀な人間をそこに放り込む必要性があると思うのです。その組織にいると、いろいろな部門を知ることができるので、経営全体を見る非常にいい機会になると思います。

 特に監査に携わる職員に関しては、できが悪いから監査でもやらせようかという従来型の人事ではなくて、優秀な人間を育てる、優秀な人間が監査を担当することによって、会社が良くなっていくという気持ちで人事をやっていく必要性があります。社外取締役をやっていた大手の証券会社では、この点を何回か役員会で申し上げたことがあります。

鈴木 監査役会設置会社も、頑張ればちゃんと機能するということですね。

川北 監査役会設置会社か、指名委員会等設置会社か、監査等委員会設置会社か、この区別というのは、あまり重要ではないと思います。

社外役員の役割

鈴木 指命委員会等設置会社の方がガバナンスが強くて、監査役会設置会社は旧態然としたガバナンスの仕方みたいなステレオタイプ的な言説がときどき見られます。独立性をちゃんと確保しておけば、監査役会設置会社でも十分機能するということですね。ありがとうございました。

 次にコーポレートガバナンス・コードでは、社外役員を増やすように求められていて、その理由にはいろいろあって、しがらみにとらわれないモニタリングの強化などが言われています。特にコーポレートガバナンス・コードでは、適切なリスクを取れるような経営判断を行うことも社外役員に対する期待としてあると思われます。経営者がリスクを取った経営判断ができるようにするために、社外役員が果たすべき役割には、どのようなことがあるのか伺いたいのですが、川北先生、何かご意見はございますか。

川北 これに関しては、一つは役員会で社内役員の中からあがってきた議案を議論するだけではなくて、社外取締役の中でのフリーディスカッションまたはCEOを含めた少数でのフリーディスカッションとか、そういう機会を持つ必要性が非常に高いと思うのです。その中で、実際に役員会であがってきた議案以外に、こういう問題があるのだと社内外で認識を深め合うことが一番重要ではないかと、経験からそう思っています。

鈴木 JFEホールディングスでは、社外役員のディスカッションを積極的に進められているようですが、それは経営者のリスクを取れる判断に資するためという役割も期待されてのことなのですか。

林田 結果としては、それを期待しているということです。社外役員の方が意思決定するのに、皆さん情報量が社内の人間と圧倒的に違います。その中で非常に難しいディシジョンを迫られるのを、以前、社外の方からいろいろと指摘されました。社外役員の方にそこまで期待するには何が必要かというと、取締役会は単に議決する機関ではなくて、生煮えの状態でもいろいろなことを議論できる、実は、今こういう新しい投資を考えているとか、海外でこういうことを考えているということを、煮詰まる前に社外役員の方にお話をして、意見を聞いていく。ものを決めない取締役会でいいと思うのです。

 例えば、大きなことを決めようと思ったら、取締役会にぽんとかけて決めてくださいではなくて、取締役会で2、3回議論した上で、最終的に決めていただくというプロセスです。これを取らないとリスクを取っていただこうと思ったときに、社外の方は逆にヘジテートされるのではないかと思います。かなりの情報量を社外の方にも提供することが、リスクを取っていただくことの最も重要なことだと思います。

 もう一つ極めて抽象的というか、情緒的かもしれないですが、プロジェクトをやっている人間と直接話をさせることです。単に会社の執行系の一番上の組織長が、社外取締役に説明することではなくて、われわれがずっとやってきたことは、やろうとしている人の目の色や態度によって、真剣度が分かる部分があります。そういう機会をできるだけ作ることが必要だと考えますと、社外役員には私どもの会社でかなりの時間を割いていただかなければいけないと思います。時間的な拘束を考えてもらう。海外出張も社外の取締役、社外の監査役を含めて、どんどんしていただいています。そうしていただくことが、結果としてリスクを取るために必要なのではないかと思います。

鈴木 十分な情報を提供することと、現場を肌で感じてもらうことの両方を充実させようと思うと、社外役員に対するサポート体制を整備することが重要だと思います。先ほどのお話だと、海外出張などに行ってもらうということでしたが、それ以外の御社でのサポート体制には、どのようなものがありますか。

林田 取締役会の前に、できるだけ効率化も兼ねて社外役員の方みんなに集っていただいて議案の説明をして、その中で出た議論、質問等をまた取締役会であらためて説明するなど、できるだけ執行系の人間が説明する時間を取る。これは特定のサポートの人をつけるということではなくて、それぞれの業務をやっている人間が、社外役員に直接説明する時間を十分に取るということです。これがまさにサポートではないかと思います。

取締役の専門性

鈴木 今度は、取締役の専門性の話に移ります。すでにお二方からもお話がありましたが、役員についてもさまざまな専門性が要求されるようになってきているということで、すでにいくつかの会社ではスキルマトリックスが紹介されております。林田特別顧問から紹介いただいた資料を拝見すると、企業経営、財務・会計、人事・労務、ブランド戦略まで、専門項目が並んでいます。しかし、その中には根回しや調整力といった、かつての日本企業で最も重視されていたかもしれない要素は入っていません。ですから、特に専門性がなくて調整力だけしかないような人は、これからは不要であるという時代になってきているのだろうと思います。

 これは社外だけに限らず社内も同じことが言えると思うのですが、そういった専門性を身に付けるための個人としてのスキルアップ、専門性を磨くということと、会社の人材育成という二つの側面が、両方とも重要になってくると思います。川北先生はご自身が専門性を非常に高めて役員をされていて、一つのロールモデルを体現されてきたわけですが、川北先生ご自身の経験にこだわらずに一般論でも結構ですが、専門性を磨く、あるいは会社として人材を育成するという点に関して、何かご意見をお持ちでしょうか。

川北 それが駄目だとは言わないですが、今までの日本企業は、オールラウンドプレーヤーを重視して、そこに重点がかかり過ぎていたと、ずっと私は思っていました。特定の部門で活躍できる人材を育てて、最終的には役員のスキルマトリックスに合致するような能力とする。必要な能力は、個々の企業で違うものが入ってもいいと思います。わが社であればこういう能力が必要だというのは、役員のスキルマトリックスではないのですが、そこに集約していって、社内からそういう分野でのトッププレーヤーを育てていく、そういう長い目で見た教育のプロセスを計画していく必要性があると思います。私がいた日本生命で言うと、生命保険会社全体にそうですが、現状、保険料もしくは保険金に関する専門家を今非常に重要視してきています。

 あとは経理や財務は一般の企業にもどうしても必要になってくるし、資本コストが重視されてくると、余計に経理、財務の能力というのが重要視されます。一般的な企業として重視されるものと、企業にとって特殊なものとがあって、そこは個々の企業で見極めて、育てていく絵を描くことが必要だと思います。

 今必要になってくるのは、システムというかデジタル分野だと思うのです。海外の経験者と話をしていると、日本企業と海外企業を比べた場合の日本の特異性というのが、システムの人材が社内に非常に乏しいということです。その結果、コロナの時代において、本当にきちんと対応できるかどうかということが、そのとき議論になりました。新しい時代に応じた能力を企業は選別していって、社内で対応できるような人を育てていくことが重要です。

 話が最初に戻りますが、もちろんオールラウンドでプレーできる人も当然必要になりますが。

林田 川北先生がおっしゃったとおりで、オールラウンドプレーヤーばかりがそろったら、結局何もできないのではないかと思います。一つは、社内で製造業の場合は、ある分野のスペシャリストとしてずっと育ってくる。これをあるときからオールラウンドプレーヤーになれとは言わないけれども、ある程度の広い知識を持たせるというロールモデルを作っていって幹部候補生にしていくことが必要だと思います。

 もう一つ、よく言われるのが、社外役員の方への教育、研修です。これを十分にやっているかというと、なかなか難しい部分があります。というのは、そんなことをやったら失礼ではないかという部分があるのです。私どもは、企業側にニーズとしてあるバックグラウンドを持った人を選んでいます。特に新たに付け加えることはないのですが、社外役員に関して言うと、企業の実態、現場を海外含めて見ていただいて、われわれの事業の特性を理解していただくという、ある種の社外、社内の研修が必要だと感じています。

 今、非常に重要なのは、やはり技術の分野でもITをマネジメントできる人です。ITの専門家である必要はないのだけれども、ITがなんたるかをきっちりと理解して、マネジメントに活かせる人材は非常に重要だと思います。

 今、ビッグデータがいろいろ言われて、データサイエンス分野が非常にもてはやされているのですが、この分野の人材は正直非常に少ないです。私どもは徹底してここの育成を今やっています。多分それが実るのは5~10年先だと思いますが、その分野へ教育・研修、育成をシフトしていかないといけないと強く感じています。

鈴木 それはビジネススクールを抱える私どもの大学にとっても、非常に重要な課題になっています。大学院だけではなくて学部教育でも、IT教育、データサイエンス教育を本格的に実施しなければいけないと思います。

林田 私どもも某IT企業の社長、会長経験者が取締役として入って、取締役会での議論の視点がだいぶ変わったと思います。やはり社外役員の重要性というのは、特に私どもと違う視点での指摘を受けたときに、非常に感じます。

ESG投資等

鈴木 それでは最後にESG投資と開示、ステークホルダー主義の議論をしたいと思います。先ほど林田特別顧問から、ESG投資と開示に関しまして、開示基準の統一は非常に難しいのではないかというお話がございました。IFRS財団[i]でも統一基準の動きがあるみたいですが、そのあたり何か情報をお持ちでしたら教えてください。

林田 9月末に、IFRS財団のトラスティの方で、そういうところに取り組む必要性があるのではないかというディスカッション・ペーパーが出ました。それに日本はどう対応するか。アメリカは今までも進めてきていますし、特に今度バイデンさんが大統領になれば、今までとはがらっと方針が変わってきて、そういう基準づくりが大事だということになってくると思います。

 日本もその協議ペーパーに対して、12月に入って早々にでもコメントを出すことになると思います。これは大きな流れとして、ある基準を作っていくことは、もう変わらない方向性だと思います。一方で本当に客観的で、かつ検証可能な定量的情報として提供できるのかということに関して言うと、過去の実績等に関して言えば、ある程度できるとは思いますけれども、大事なのはこれから先のことなので、非常に難しいテーマを背負っています。

 ただこれは避けては通れないので、完璧なものでなくても、ある程度今乱立している基準を少し整理するとか、有用で、かつできるところから順次やっていくという現実的な路線が、選択肢なのかと思っています。ヨーロッパは結構早い動きをするのではないかと思いますので、日本も精力的にそこのところはディスカッションに加わっていかないといけないと考えています。

鈴木 ありがとうございます。情報開示については、まだ流動的というか、これからということなのですが、こういう状況の下で、ESG投資が、本当に企業価値の向上に結びつくのかどうかということが疑問として残るわけです。企業価値向上に結びつくかどうかは、二つの側面があると思います。一つは企業のESGあるいはSDGsに配慮した活動そのものが、企業価値向上につながるのかという側面と、もう一つはその企業のESGに配慮した活動を開示することが、企業価値向上につながっていくのかという二つだと思います、この点について川北先生、何かお考えはございますか。

川北 ESGの調査会社の生データを用い、日本企業が対象ですが、Eに関して20年近く分析したことがあって、この夏に共同研究者と論文を公表しました。論文では企業の利益ではなく株式投資パフォーマンスに与える分析をしていますが、その調査会社のEとSに関する評価が投資パフォーマンスに対してプラスの効果を与えていました。つまり、EもしくはSに優れた企業の投資パフォーマンスは、そうではない企業に比べると高いという結果が出ています。ただし、その高さは、そんなに大きなものではないのです。有意ではあるのですが、びっくりするほど高くはないのです。他の企業業績要素の方が大きいということです。

 またその効果が出てくるには、3年とか5年ぐらいかかります。この点への留意は必要だと思います。ただ、企業自身がEとSに対して熱心に取り組むことが、何らかの付加価値を生むのは確かだろうと思っています。

 開示に対して言うと、統一することは非常にいいことだと思います。今、企業が困っているのは、いろいろなところからいろいろな調査票が来て、回答先を選別しなければいけないことですし、全然観点の違うことを聞かれたりすると、非常に手間がかかってしまう。それがある程度集約された形で開示をすればOKになると、企業もいいことがあるということです。

 これは他の財務データと同じことですけれども、そういう非財務情報を単に鵜呑みにしていいのかという問題が出てきます。林田特別顧問がおっしゃったように、特に将来の計画に関しては、それをそのままというのは難しいと思います。企業と投資家自身の対話が本当に必要な分野だと思います。そうすることで開示の内容が高まっていくし、企業行動がより洗練されたものになっていくと、私は思っています。

ステークホルダー主義

鈴木 ありがとうございました。もうだいぶステークホルダー主義の話に入ってきています。皆さん議論の中で、株主至上主義、株主第一主義には限界があって、中長期的な企業価値の安定、向上という観点からは、ステークホルダー主義を重視せざるを得ないという点では、意見は分かれていないと思います。そうすると、株主だけではなくて、顧客、従業員、環境、将来などいろいろなところに目配せしなければいけなくなってくるわけですが、その一方で現在のようなコロナ禍の下では、そんな先の長期的なことを考えている暇はない、それより目先のことで精一杯というか制約が出てくると、そこで何らかの優先順位を付けなければいけないのではないかという話も出てくるかと思います。その点について、林田特別顧問はどのようにお考えでしょうか。

林田 現在のコロナ禍での優先順位となると非常に難しくて、目先のこと、本当に社員、取引先の安全を最優先に考えることになって、それ以外のところには、まだそれほど手が回らないかもしれません。これは落ち着いてきたら、全方位というか、企業のステークホルダーの人たちと真剣に今まで以上に向き合って対話をしていくことが、企業には求められます。

 SDGsとの関連でも、いわゆるそれをしない企業は、やがてビジネスから退出を命じられるぐらいの覚悟を持たないといけないと思っています。企業として存続するためには、世の中の発展に資する企業でなければいけないし、存在意義を持たなければいけません。結果として、ステークホルダー全てにプラスになるような活動を進めていかなければいけないことが、ルールになってくる。企業としては、昔からこれが基本的なルールだったのだろうと思います。

取締役会・監査役会の実効性確保

鈴木 ありがとうございます。せっかくですので、参加者の方にも、質問していただきたいと存じます。どなたか、質問のある方はいらっしゃいますか。

質問者 まさにコーポレートガバナンス・コードを作成する側の人間として、賛否両論、身の引き締まる思いで拝聴し勉強になりました。ありがとうございました。

 林田様に質問があります。JFEホールディングスでは、取締役の実効性評価で外部評価機関を使ったり、あるいは社外取締役だけでの統合報告書を作成されていると伺いました。これは非常に先進的な取り組みだと思いました。これについて、言及可能な範囲内で結構ですので、どのような改善点とか提言があって、どのように取締役会にフィードバックされて、具体的にどのような改善が実際に行われたかということをお伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

林田 簡単に申し上げます。一つは、役員の増員です。あまりにも効率化しすぎて、取締役5人プラス監査役4人のときがあるのですが、効率よりももっと幅広い議論、それぞれの事業に分かった人間を議論に加えるということで、事業会社、エンジニアリングと商社のCEOを取締役に加えると同時に、社外も1人増やしました。これは、実は取締役会の実効性評価から出てきたものであります。

 もう一つ、会社の中期の経営計画を、以前は1年かけて作っていました。それを発表する直前に「中期計画を作りました」と言って、取締役会にサインを求めてくる。どちらかというと、取締役も中期計画というのは、すぐの業績でもないと考えていたのですが、やはりだいぶ意見が出まして、もう少し早い段階でインボルブさせろということで、今は1年前から3か月ぐらい刻みに、今どういう議論をしているか等を取締役会に提示することにして、取締役会からのフィードバックをまた計画作成に反映します。これを単に中期計画ではなしに、いろいろな議題の審議、特に大きな金額の投資や新たな地域への進出・投資については、何回か時間をかけて議論して、私どもに欠けている視点をさらに追加して、検討していくように改善をしてきました。

鈴木 ありがとうございました。

 まだいろいろ議論したいことはたくさん残っていて、十分な議論ができなかったことをお詫び申し上げます。現在コロナ禍の下で、業容、業態の変更あるいはビジネスモデルの変革を迫られている企業が多くあると思います。そういうリスクを伴う変革を適切に行うためには、前提として、ガバナンスがしっかりしていることが求められると思います。今回のシンポジウムが、そういったガバナンスの強化に少しでも役に立つことができれば、開催した意義があると思っています。どうもありがとうございました。


[i] IFRS財団:IFRS財団は独立した民間の非営利組織で、公共の利益に貢献する目的で運営されている。金融市場監督当局のような公的機関で構成されるモニタリング・ボードによって監督されている。 評議員会は、審議会のガバナンスと監視、IFRS基準の促進、そして 組織の資金調達に対する責任を担っている。

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