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MBA Cafe主催 船越多枝准教授によるオンライン講演会のご報告
2022年3月10日(木)19:30より、大阪女学院大学の船越准教授に「ダイバーシティ&インクルージョン」という経営学の最新トピックを講演いただきました。
船越准教授は2013年に神戸大学MBAを修了、博士後期課程を経て、現在の職に就かれております。今回は、これまでの研究成果を活かして執筆された書籍『インクルージョン・マネジメント―個と多様性が活きる組織』の出版を記念し、ダイバーシティの対概念として昨今、注目されているインクルージョンの概念とそのマネジメントについてご講演いただきました。

2021年 白桃書房
MBA Cafeでは、コロナ禍になって以降、オンラインを活用した修論相談会、入学希望者向けの神戸大学MBA公開セミナー「修了生が語る神戸大MBAってどんなとこ?」など、新たな試みを次々実施してきましたが、今回のイベントは、神戸大学MBA修了生が講演を行うという初めての試みです。テーマが時流に沿った大変興味深いセミナーだったこともあり、100名を超える方に申し込みいただきました。
当日は船越准教授の提案で、参加者は入学年と名前併記することとしました。出席者の中には、1995年入学の方や、2000年代前半入学の方がおられ、改めてアルムナイネットワークの歴史の深さを知ることとなりました。また、参加者の中には、複数の同窓生と一緒にセミナーを聴講して、オンライン同窓会のようなひと時を感じることができた方もいらしたようです。
インクルージョンとは、個人が「帰属感」と「自分らしさの発揮」の両方ができていると認識している状態です(Shore et al., 2011; 訳は船越(2021)による)。日本企業において、ダイバーシティ推進の必要性は広く浸透し、ポジティブアクションや女性の活躍推進など身近になっていますが、一方で、多くの企業がダイバーシティ推進に取り組んでいるにも関わらず、成果につながる実感を持てていないといった報告もあります(経済産業省, 2017; 矢島ら, 2017)。

ご講演時の様子
船越准教授は、多様性をイノベーションの創出、多様なお客様への対応力、社内外からの評価など組織力につなげていくにはインクルージョンが必要という仮説を置き、何が日本の職場のインクルージョン意識を促進するのか、またインクルージョン認識が高まることでどのような効果があるのか、日本企業における女性・外国人を対象に調査を実施されました。
インクルージョンを活かす企業には、「組織レベル」と「職場レベル」の両方での多様な人材がコミュニケーションを増やす仕掛けの徹底とその継続性があり、個々人が自己開示していくことで、その人を活かしていく周りの配慮につながり、その結果、働く意欲の向上、相互扶助、自発的行動の促進、職場内の相互信頼の向上につながるとケース企業の事例研究から導出されました。
ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)推進の陥穽として、制度拡充や制度整備のみに注力しても効果がないと、昨今の実感が湧かないダイバーシティ推進に警鐘を鳴らしつつ、インクルージョンを実現するには、トップのコミットメント、D&Iに関する理念の浸透、職場での個別配慮の実現がカギであると締められました。
講演後の質疑応答ではMBAホルダーの研究者として、実務における強い問題意識に立脚された洞察の多い話に、現役生、修了生から数多くの質問がありました。また、閉会後も、質問し足りない参加者が残り、1時間強ほど質疑応答などが続き、大盛況のうちに会を終了することができました。
MBA Cafe では会員の皆さまに、今後も最新の経営理論に触れるセミナーを今後も開催していく予定です。OB/OG諸氏のご協力を引き続き賜れればと考えておりますので、何卒よろしくお願い申し上げます。
そして、最後になりましたが、ご多忙の中、今回のオンライン講演の講師を快く引き受けていただいた船越准教授に改めて厚くお礼申し上げます。船越准教授の著書に興味を持たれた方はご購入をお願いいたします。

閉会後、更なるディスカッション後の一枚
