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『渋沢栄一の「論語講義」』輪読会のご報告
現代経営学研究所では、神戸大学大学院経営学研究科教員による輪読会をZoomによるオンラインで不定期開催しております。
10月から全10回、火曜日の夜に、原田勉教授による『渋沢栄一の「論語講義」』 輪読会を開催しました。輪読会を担当した原田教授に所感を寄稿いただきました。
輪読会を終えて
原田 勉
今回の輪読会では、『渋沢栄一の「論語講義」』を課題図書とし、渋沢が取り上げた約110の論語の章句を10回にわたり読んでいきました。論語は、今の言葉でいえば「キリトリ記事」であり、孔子が発言した状況やコンテクストが必ずしも明確ではなく、多様な解釈が可能です。渋沢は論語を大変重視しており、論語の教えをもとに経営していたようです。また、大久保利通や西郷隆盛、井上薫など明治の元勲との交流もあり、彼らの人物像と照らし合わせて、渋沢が孔子の君子に関する主張を解釈しているところが特徴的でした。しかし、この輪読会では、渋沢の解釈にとらわれることなく、自由な解釈で、特に「経営」という観点から論語を読み直す作業をし、参加者の皆さんから多様な意見が出て、毎回活発に議論することができました。私自身、大変学ぶところが多く、輪読会開始以前と比べると、論語に対する理解が格段に深まったと考えています。この輪読会を進めていくなかで、特に印象深かったのは、従来の論語に関する解釈とは違う、経営的な視点で孔子の主張をモデル化できたことです。
つまり、論語とは「下山の思想」であり、自らが持つ「勢い」を拡充していくことに尽きるということです。これは私たち自身の生き方や経営においても適用できる考え方です。この「下山の思想」は、輪読会当初には明確な形で定式化できていたわけではありません。しかし、輪読会で多様な意見を伺い、議論し、質問に答えていくなかで徐々に明確化されていきました。参加者の皆さんには、この「下山の思想」を是非とも日常の生活のなかで活かしていただくことを祈念しています。
最後になりましたが、参加者の皆さんには、積極的にご参加いただき心よりお礼申し上げます。

課題図書:平凡社新書 渋沢栄一の「論語講義」
渋沢栄一 (著)、守屋淳 (編訳) 、平凡社、2010年
参加者の声(アンケートより抜粋)
- MBA修了後に先生の講義を受けられる貴重な機会と思っており、継続していただけたらうれしいです。
- 原田先生の論語を読み解く視点は、中国哲学や東洋学、中国文学の視点とは異なる経営学の視点で、毎回の輪読会が刺激的で大変面白かったです。経営に携わる方々におすすめしたい輪読会でした。
ご参加いただいた皆さまには、アンケートにもご協力いただき、この場を借りてお礼申し上げます。
輪読会は、課題図書の内容を深く理解することができる場となっています。不定期にはなりますが、今後も輪読会を開催していく予定です。関心のある回がございましたら、ご参加検討いただけますと幸いです。
